3.自宅で死ぬということ
病院に着く。救命救急に進む。
父の亡骸と対面。
信じられないが、目の前に現実を突きつけられた。
今にも起きてきそうだが、呼んでも叩いても起き上がらない。
泣き崩れてしまった。
母を励まさねば、と思っていたが、逆に励まされてしまった。「気を強く持って」と。「これから警察が来るから」とも。
検死。
自宅で死去した扱いで、病院の医者は死亡診断書を書けないという。
父を地下の霊安室に運ぶという。
エレベータで地下に。
そこに警察が来る。
警察のヒアリングスキルの低さに憤慨する。
質問が下手。
誘導尋問。決めつけ。断定。
どういうわけか、入れ替わり立ち替わり警官が出てきては引っ込んでいき、を繰り返す。
そして、何度も同じことを聞く。
(関係ないが)メモがほとんどひらがな。
そして紙の至る所に書く。メモを散発的に記載するこの方法にはルールがあるのか?!
いや、ないだろう。
紙なのかゴミなのか分からないような四隅の丸まった紙に書き留める警官も。
遺族に対する配慮、気遣いがない。
悲しみに沈み感傷に浸る、そんな暇は与えられなかった。
父の遺体を検死しても、死因の特定には至らなかったと仰せ。これから警察の医者に運び、検死するという。
警察から一言。
「ご主人、ガン保険には入っていましたか?」
この期に及んで一体なにを言い出すのか。
尋ねると、曰く、死因がガンだと保険が下りるが、そうでなければ下りない、と。
ただし精緻な死因を特定するには、解剖が必要だという。
とすると、体を切り刻むことになる。体だけでなく、頭や顔に傷が残るという。
今決めなければいけないのか。
曰く、これから自宅で決めればいい、そこでサインして出してくれ、と。
え?
警察がこれから自宅に来るという。
現場検証をする、と。
警察が自宅に来る、しかもこれから?ってどういうこと?!
要はこういうことだ。
自宅で死んだ。
ということは、事件かもしれない。
死因が特定できていないし、と。
は?
外傷がないなら、他殺ではなかろうに。
警察の検死係を対象にした、配慮、ホスピタリティ、カウンセリング、コーチングのスキル研修を提案してやろうと新たな目標ができた。
ちなみに。
話はそれるが、自宅で死ぬということについて。
死に至る病を患っていて、医者も承知の上で自宅で療養、そのまま死去、というケースは、担当医師が死亡診断を行い、刑事事件を疑われることなく、警察も来ないとのこと。
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