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僕は外国語をしゃべっている

僕は外国語をしゃべっている
それが通じるかは分からない
例えば熊に出会ったら
通じるだろうか
おいお前
そこで何をしている
いや、そういうあなたこそ…

はじめに言葉ありき
次にため息あり
息を吐ききったら
息継ぎを
そして最後に叫ぶのさ
それが通じるかは分からない

僕は外国語をしゃべっている
母の言葉を忘れたから
父の言葉を思い出そうとして
墓の下を掘り出せば
一片の白い骨が舞い上がる
そこに蝶が舞い降りて
軽いくしゃみを誘い出す

何とか息継ぎができた
何とか息づかいを思い出した
それでも言葉が紡げない
吃音らないように
すればするほど
ど…う…も
二の言葉が接げないんだ

あいつにぶつけてやろう
あいつを追い返してやろう
言葉よ石になれ
言葉よ岩になれ
言葉よ物質化しろ

さて岩にはなった ものの
その重みにつぶされて
投げることはかなわなかった
それでもおかげで熊からは
隠れることができた ものの
今度は地面に押し込まれ
息ができなくなってしまった ものの
言葉は僕の墓標となったようだ

僕はもう外国語を
しゃべる必要がなくなった

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