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日々の息継ぎ(詩集)

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眠りにつくための、毎日の詩作
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2023年5月の記事一覧

青い朝

朝の光は青すぎて 駆け出す新聞屋の車輪まで それを見逃せば 風に乗り遅れる 二度寝する目覚…

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パーク・ハウス

気がついたら土管に 砂と葉っぱと 雨の降る間に 俺のパーク・ハウス そこの隙間に ほんのスモ…

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さぼてんの写真

さぼてんの写真がある 50mm, f1.8のレンズで撮ったのだろう 一点にだけピントが合って まわり…

3

われわれは家畜である

われわれは家畜である かつて誰にも飼われず 自由に暮らしていた先祖は あるとき安定した食糧…

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誰もいない、すてきな夜

雨のたたずまい 黄昏も消して 涼しげな顔で カーテンを閉める はちみつの石鹸 かすかに香るの…

4

あなたの夢を見ている

あ、あなたの夢を見ている あ、あなたの見ている夢を見ている あ、あなたの夢に私が出ている …

3

メトロ

メトロ… 地下鉄に 乗って 滑り 落ちる 地上の 駅は まぶし すぎる メトロ… 人の いない 車内 かすんだ 闇を 顔が 走り ぬける メトロ… コンクリートの 静脈を 伝わって 流されてゆく 血は吹き出ない ただめぐるだけ マグマも知らぬ スキンディープ メトロ… 地上の 駅は まぶし すぎる 膨らみ すぎて 破裂 するから メトロ… 闇を 切り裂く 力を くれる 風を 押し出し 旅へ 導く メトロ… 年をとった 都市を 無数の皺で 切り刻み 地上はひび割れて 何とか こ

同時にいること

遠い国の言葉の通じない友達のことを思う 僕らは同時にいる 気温も天気も違ってはいるが それ…

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わたりゃんせ

わたりゃんせ わたりゃんせ いのちの水をわたりゃんせ 三途の川をわたりゃんせ 奪衣婆ごときに…

3

記憶

記憶は、僕の心ではなく 君の目のなかにある 記憶は、僕の手ではなく 君の顔のなかにある 記憶…

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この少年、悪党につき

この少年は最初から知っていた その身そのまま生まれたときから 頭の先からつま先までも 悪党…

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孤独な列車

孤独な列車はどこまでも 別れたはずの君を乗せ 先に出た僕抜き去って とことこトコトコ どこま…

1

カリスマへ

最低の奴がやった罪を 最高の連中が裁いて その瞬間から 偽善をなぞって あーははは 皆殺しさ …

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千の手の記憶

明日 失う 記憶の片隅に 君の手を 埋め込んだ 千の手の記憶へ 悲しみ 喜び すべて聞こえてくる いつかまた 僕の手で 包むから 千の手の記憶に 君は 知っている 死んだ人たちは 僕の胸で 眠っている 世界中の 痛みと その時の恍惚が しみ込んで 震わせて 生きている 千の手の記憶と 欠乏 募る欲望 いがみ合い つながる ぐるぐる回って溶けてバターになれ 幼子に 分けてやる糧になれ 千の手によって 世界中の 人間の 記憶のかけらを 僕はただ 忘れている だけ