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2018ロシアW杯テクニカルレポートにおけるGK分析の要約

 先日、FIFA Technical Study GroupのロシアW杯レポートが公開された。ここではそのレポートにおけるGK分析について触れていく。

 このGK分析では主に4項目を取り上げている。

・一対一の守備
・攻守の切り替え(特に守→攻)におけるGKの役割
・PKセーブ
・ローブロックを敷いた時の欠点

 また、レポートの発表とともにFIFAの公式YouTubeチャンネルにおいてそれぞれの項目に関するプレー映像が見られるので、そちらも参考にしながらまとめていく。


①一対一の守備

 大会を通じて幾度もあったのが「ペナルティーエリア内での一対一」だ。そしてその状況で有効な手段となるのが、レポートで言及されている"X-block"である。

 ”X-block”とはGKと相手の一対一において、両者の距離が極めて近い場合に有効となる守備の方法である。文字通り”X”のような身体の形でブロックすることだと思われる。


②攻守の切り替え(特に守→攻)におけるGKの役割

 GKがボールをキャッチした時に、守備→攻撃への素早い切り替えを選手に要求しているチームがいくつかあった。そうした状況でGKにとって重要になるのが、素早い判断と意思決定である。

 特に最後のクルトワのプレーは日本人の我々にとって記憶に新しいだろう。


③PKセーブ

 前回大会に比べて大幅に増えたのが、PKの数だ。その増加は、新しく導入されたビデオ判定(VAR)が影響している。グループステージにおけるPKのうち、25%が枠を外れたかGKに止められた。

 またPK戦でも何人かのGKが活躍を見せていた。


④ローブロックを敷いた時の欠点

 守備組織のコンパクトさとDFラインを深くする守り方が目立った今大会だが、その結果として、GKの視野が限定され、反応時間が削られる。また、深いDFラインによるローブロックは、人に当たってコースが変わる可能性を高めてしまい、そうしたゴールがいくつか見られた。



ひとりごと

 前回大会のテクニカルレポートも合わせて読んだけど、一対一の守備の方法について技術委員会が言及するのは初めてだったんじゃないかな(たぶんそんなことはないんだろうけど)。今回初めて目にした”X-block”だが、用語自体はそれほど重要ではなく(だって”開脚型ブロック”や”フェンス”、”スターブロック”なんて言い方が広く使われてるし、用語を知らなくてもそのプレー自体はよく見られる)、そうした技術が「現代サッカーのGKにとって重要だよ!」とFIFAに認められたことが、大きな意味を持つんじゃないかな。だって8年前に発行されたGoalkeeping Manualにはそうしたプレー自体が扱われていなかったんだから。

参考文献:

Technical report FIFA World Cup 2018

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