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【別冊 Blocking Effect】(仮) June 2018

現代サッカーのGK技術論を紹介する(ニセ)雑誌、今月の特集は「ドイツ・イングランドの育成から紐解く最先端のGK技術」、さらに徹底解説のコーナーでは「テアシュテーゲンのブロッキングディフェンス」を取り上げた。



特集
「ドイツ・イングランドの育成から紐解く最先端のGK技術」

 近年、時間とスペースがなくなってきたと言われるサッカーの世界において、ゴール前の状況も例外ではない。一対一の駆け引き、崩しの形が狭いフィールドで繰り出されるなかで、GKに求められる技術も日々変化している。
 そのひとつが「ブロッキング」−身体を目一杯広げてシュートを防ぐ技術−だ。当ツイッターにて度々話題にはしてきたが、ここでもう一度まとまった形でアウトプットしておきたい。
 実は以前にも別のブログで取り上げている。そして今回、さらに掘り下げていく上で欠かせないのが、育成現場でどのようにこの技術が組み込まれているかだ。
 もう少し遡ったフットボールの世界にもブロッキングができるGKは存在した。ピーター・シュマイケルはその代表例だろう。ただ、それは彼がもともとハンドボールGKの経験があり、そこで得た技術を元にフットボールに応用した形だ。なので、サッカーの現場で実際に訓練されて習得された技術であるかは不明だ。
 一方で、現代サッカーにおける「ブロッキング」は当時と異なる。実際に、練習に組み込まれたひとつの「習得すべき技術」として訓練されているのだ。それはイングランドとドイツの育成現場を見れば一目瞭然だ。

 まずは、イングランド女子代表のトレーニングを見てみよう。

 ブロッキングの導入練習としては素晴らしく整ったトレーニングである。基本的な足の出し方、股下の閉じかた、腕の位置、いつブロッキングを発揮するかが、トレーニングを見ればわかる。
 注目して欲しいのは、これが代表チームの現場で行われているという点だ。国の代表チームがこれを行うということは、それが「欠かせない技術」として認識されているから。サッカー協会がいろんな知見を集めたなかで、やはり必要だよね、ということでトレーニングに反映されている。現代サッカーに不可欠な技術だということが、代表チームのトレーニングを見ればわかるのだ。
 ちなみに男子代表チームの練習ではまだ見ていないが、代表GKのバトランドはこの技術を使いこなしている。


続いて、ドイツの育成現場ではどうだろう。イングランドと同様にトレーニングに組み込まれている。

 これはドイツサッカー協会が主催しているGKエリートキャンプのトレーニング風景だ。確かにブロッキングが意図的にトレーニングに組み込まれている。
 さらに在野の育成現場でも見られる。

 ドイツはこうして新たな技術を意図的にトレーニングに導入し、新世代のGKを育ててきた。そしてその代表例がマーク・アンドレ・テアシュテーゲンだろう。彼こそ、現代サッカーにおいて世界を代表するGKであり、ブロッキングの名手だ。以下で徹底解説していく。



徹底解説
「テアシュテーゲンのブロッキングディフェンス」

 ここ数年で欧州、そして世界を代表するGKへと成長を遂げたテアシュテーゲン。彼の強みは、ディストリビューション(味方へのパス)の正確さ、そして一対一の局面での強さだ。その一対一の強さを支えているのが、いうまでもない、「ブロッキング技術」だ。早速彼のブロッキングディフェンスを見ていこう。

 見ているだけでうっとりするような、ブロックまでの一連の動作。寄せる→構える→ブロック。どの局面を切り取っても素晴らしい。説明していこう。
 まず、寄せる局面。相手がパスを出した時、GKがまず考えるのは「パスをインターセプトできるか」。できれば、ボールにチャレンジして飛び込む。できなければ、待つ。今回は待って、シュートに備えた。
 次に、構える局面。大事なのは「股下のケア」。特にテアシュテーゲンのような、足幅を広く構える姿勢は、一対一の場面では命取りとなる。なので、普段ワイドスタンスの彼でもここでは別。なるべく足幅を狭く構えている。これによって、シュートを左右どちらかに限定できるのだ。
 最後に、ブロック。ここまでくれば、この状況はGKのもの。シュートに対して反応できなくても、ブロッキングによって身体のどこかに当てられる。そんな状況だ。そしてそれを生み出したテアシュテーゲン。自分のもつ技術を発揮し易々とシュートを防いで見せた。

 続いて

 GKはどうしても手で反応できない領域がある。その一つが足元で這うようなグラウンダーのシュートだ。
 そんな時に、ブロッキングの技術が応用できる。ここで紹介したプレーは厳密にはブロッキングとは異なるが、この場面で即座に足が出せるのは、その応用が効いているからだ。

 続いて

 特に3つ目の技術に注目。ブロッキングのなかでも「フェンス」という技術だ。これはフットサルのゴレイロの技術に由来する。

 磐田のカミンスキーはその使い手だ。よく見られるのでぜひ注目して欲しい。

 続いてが最後です。

 これもフェンスブロック。これまた寄せ方が絶妙。
スルーパスに抜け出した相手にボールが届く瞬間を狙って、ギリギリでシュートを打たせるようにタイミングを合わせて、低く構える。股下を閉じ、両手を広げる。この状況で相手は無理矢理でもシュートを打ってくる。そしてそこはもうGKのテリトリー。軽々ブロックしてピンチを防いだのだ。

 「シュートコースがどこにもない」と相手に思わせた時点でGKの勝ちだ。その状況をどのように生み出すか、そしてその状況でどんな技術をGKは発揮するか。その技術こそが「ブロッキング」なのだ。

最後に

 現代サッカーのGK技術を語る上で欠かせない「ブロッキング技術」、今回はその技術を少しなりとも掘り下げられたと思う。さらに今後、新たな技術を発見できたらこうしてアウトプットしていきたい。以上。

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