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46%削減はどれほど難しいか

先日の気候サミットで、菅首相が「2030年までに46%削減(2013年比)」を宣言し、いよいよ脱炭素も待ったなしの状況になって来ました。

この数字のシルエットなど決まり方の問題や、米国のケリー特使からの圧力など外交的な意味について、などなど様々論点はあると思いますが、まずはこの46%という数字がどれほどのものなのかというところを見ておきたいと思います。

まずその水準についてですが、昨年10月に菅首相が「2050年カーボンニュートラル」を既に宣言していますので、現在の排出量から2050年ゼロ排出へ直線を引けば、2030年はおよそ46%減の水準なので、そういう意味では妥当なラインということはできます。

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まだ正式な発表はされていませんが、経済産業省によれば2030年の電源構成は、原発20%、再生可能エネルギー30%以上ということで、およそ50%がゼロエミッションになるというものでした。その実現性に関しても色々いうことはあるのですが、とりあえずそれが実現したとすると、現在75%程度ある火力発電が50%程度まで比率が下がることになるので、ざっと電力由来のCO2は2/3になることになります。

図を見ると、その電源構成の変更だけでおおよそパリ協定の時に約束した26%減と同じくらいまで減らすことができることが分かります。つまり、電力以外の部門で残りの20%分を減らす必要があります。

それは、現在(図の2019年度)の排出量に換算すると、およそ24%分になります。24%というと、自動車とトラックで消費するガソリンとディーゼル、それからプラスチックなどの化学製品の消費を全て辞めてもまだ足りない(EV化などで代替すれば消費電力が増えるので、さらに他で減らす必要がある)という水準です。

現実には、特定の部門をゼロにするということはありえないので、電力以外の全ての部門で少なくとも4割程度削減する必要がありそうです。

私は日本の気候変動外交の戦略として、今46%減を目標として宣言したことを支持していますが、実際にあと9年で削減の遂行を約束するとなると、それは殆ど不可能だと思っています。なぜ不可能だと思う目標を支持するかと言えば、現在は不可能に思われる目標を設定することにこそ意味があると考えているからです。

あとは、目標と現実のギャップをいい意味で埋めていくにはどうすればいいかを考えるフェーズなのだと思います。少なくとも内政的には。通商政策、経済安全保障政策としては、また別のレベルの議論があります。それはまたどこかで。

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