【コメント】脱炭素時代の新燃料 アンモニアの安定確保へUAEと連携

日本の脱炭素戦略におけるアンモニアの位置づけは極めて大きいです。

菅首相が10月26日に「2050年カーボンニュートラル」を発表する直前の10月13日、日本最大の発電会社JERAがアンモニア発電による「2050ゼロエミッション」を発表しています。

このJERAのローロマップの存在が、政府のカーボンニュートラル宣言に大きく影響していると考えて間違いないでしょう。

アンモニア発電の構想は、2014年から5年間行われた内閣府のSIP「エネルギーキャリア」の中で検討されてきたものです。

アンモニアは水素から作られ、逆にアンモニアから水素を取り出すこともできるので、従来は「水素キャリア」と位置づけられていましたが、アンモニア発電構想は、アンモニアのまま燃やしてしまうところがミソです。

アンモニアのための水素製造は、再エネから作ることもできますが、現在は天然ガス(あるいは石炭)から作る方が圧倒的に経済的です。しかし、それを日本でやると、ゼロエミッションにするためにはCCS(炭素地下貯留)を行わなければならないので、かなり難しいです。

従って、産ガス国でアンモニアを製造し、現地でCCSを行うことでそれを解決します。-162℃に冷やすLNGに比べれば、運搬・貯蔵面でメリットがあります。

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日揮HPより

また、LNGプラントは数千億レベルの投資が必要なため、相当の規模のガス田が前提になりますが、アンモニアプラントはそこまでのコストではないので、比較的小規模なガス田しかない所と組むことに優位性があります。

そこで出てきているのがサウジアラビアとUAEです。

中東には世界最大のLNG輸出国カタールがありますが、そこはLNGができるので大丈夫(アンモニアをやる必要がない)です。また、イランも大きな天然ガス埋蔵量を持ちますが、米国や周辺国と微妙な関係にあります。

サウジアラビアはカタール等ほど天然ガス埋蔵量はないのでLNG輸出はしていませんが、CO2を地下に入れられる油田(EOR:石油増進回収)がたくさんありますし、脱石油時代にガスの売り先を確保したいと考えているはずです。

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また、UAEはサウジと違い、ギリギリホルムズ海峡の外側に港を持てるので、チョークポイントを避けられるメリットがあります。

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JBPressより

アンモニアは臭いもあるし、有毒。CCS前提となると間違いなく高コストですが、使いようによっては(アンモニアSOFC等)いい仕事をする可能性もあります。船の燃料としても注目されています。火力発電なので調整力もありますからね。

この世界を日本が引っ張っていったらちょっと面白いですよね。

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