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隠された「助けて」を見つける

ずっと関わってきた子から「誰にも迷惑をかけたくないけど、頼ってしまってごめんなさい」と先日言われたときがあった。

僕はその場で

「でも、頼るのって普通だから。自立は頼ることから始まるし、頼らず生きるのは仕事や生きる上でも難しいと思う。だから、ひとりで生きようとしないでいいよ」

と伝えた。

これまでずっと働いてきた彼を僕は高校からみてきた。昼間働きながら家族の大黒柱として働き、家計も支えてきた。ただ、高校卒業後に働きながら一人暮らしをはじめ、今回体調を崩した。そんなときに彼から連絡をもらい、D×Pがやっている現金給付も紹介した。

しかし、彼からは

「なんだかもらうのは申し訳ない」

と連絡がくる。


別の子とはこんな連絡のやりとりがあった。


僕「緊急事態宣言出て生活大丈夫?」

卒業したA子「やばい、給与30→0になった」

僕「マジかよ」

A子「マジ」

僕「うちで現金給付とか食糧支援やっているから、頼れよ」

A子「いや、のりさんには高校時代迷惑かけすぎたから、いらん。これ以上は迷惑になる」

僕「頼れるときに頼れよ」

A子「いや、貯金は何も収入なくても2ヶ月、切り詰めれば3ヶ月あるから大丈夫。自分でなんとかやってみる」

僕「そうか、ほんまにやばくなったら言えよ」

A子「わかった。でも、緊急事態宣言長引くかな?長引いたら、やばい」

僕「抱え込みすぎるなよ」

と話した。いろいろとあったA子。ありすぎて言えないのだが、5年ぐらい僕がずっとサポートしてきたA子で「自分でなんとかするわ」と言えるぐらいになったのか、とも感心する反面、頼れるときに頼れよ、と言いたい。距離感にもよるし、場面にもよるが、頼れるときに甘えることも大切だよ、と。複雑だが、そう思うのだ。



僕自身も頼れない人間のひとりだった。

人から声をかけられるのがいやで、対人恐怖症の影響で「人と話す」ということも苦手になってしまい、冷や汗が出てしまう、緊張してしまっていた。そんな人間が自分の悩みについて話すことはなく、僕はひとり閉じこもっていた。

ただ、今考えてみると、人に頼ることができなかった分、自分が考えていることを言葉としては残しておこうと思い、ブログばかり書いていた。別に有名なブログでもなんでもない、ただただ書くだけ。日常のこと、考えていること、感じたことを書いて、世に出す。誰からも注目されなくていい、ただ少しだけでも言葉にして出そうと続けていた。

今考えてみると、ブログばかり書いていたことは「誰かに助けてほしい、気づいてほしい」とメッセージを出していたように思う。本当は助けてほしいのに、直接誰にも言えず、僕は言葉を世に出して訴えかけていた。「助けてほしい、気づいてほしい」と言えずだけど、そう訴えかけていたのだ。

精神的に回復後に、その経験からか、僕は高校をすでに卒業した子や強がってそうな子には定期的に連絡をとるようにしている。自分は言い出せなかったし、友人から声をかけられてから少しずつ自分のことを言えるようになってきたから。

「よ、元気しているか?」

とラインを送ったりする。元気だったら、それでいい。でも、その子が言葉にすることにもなるかもしれないから。「助けてほしい、誰かに気づいてほしい」と。世の中に、SNSにその子は書いていないかもしれない言葉を、誰かひとりの前では書けるかもしれないと思いつつ、僕は連絡をとる。言葉を聞く。言葉を聞き取ることで、何かできるかもしれない。そう思って、連絡をとっている。

ユキサキチャットというリーチするセーフティネットを

僕個人ができることには限りがある。僕が代表を務める認定NPO法人D×Pのライン相談「ユキサキチャット」には日々、中高生たちから「学校にいけていない」「所持金がもうほとんどない」「親からの暴力が」と相談がくる。短い文章もあれば、溢れるように出てくる数十行にも及ぶ長い、長い相談もくる。

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サービスを立ち上げたのが2018年だが、データを見てもらえると去年の3月からユキサキチャットの登録者が急上昇しているのがわかる。2021年1月末時点で3600人を超えた。毎日のように言葉が届く。

「どこにも相談できなくて」

日本のオンラインのセーフティネットは未整備だ。国レベルの10代の孤立を防ぐオンライン上の相談先はない。だから、D×Pはオンライン上のセーフティネットを築いていく。それが10代の孤立を解決していくと思っている。言葉に出してもらい、ひとりひとりと向き合っていく。

不登校で「学校に行きたくない」「学校を辞めてしまった」と悩む子どもたち。国にもNPOにも相談できない、「自分だけで解決しよう」と思っている子どもたちや若年層の子たちに、強いては福祉を必要とする親やすべての立場の人に「大丈夫ですか?」と声をかけられているのか。急に仕事を失い、所持金もなく、途方にくれている人々に私たちは関われているだろうか。

福祉は自己責任と切り捨てる仕組みではなく、必要な人に届く施策が必要なはずだ。困った人にリーチできる、そこから安心安全をつくり、住む場所を提供し、仕事やスキルを得られる社会にしていきたい。福祉から教育や就職までサポートを得られる環境へ。国が迅速に動けないならば少しずつでも改善し、民間からは声をあげ、僕等は率先的にできるモデルと仕組みをつくっていこう。


A子「のりさん、なんかあったらいうね」

最後に彼女は言った。


緊急事態宣言が延長になった。今日も声をかけよう。

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