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「研究者は自分の垣根を超えて交流しなければならない」 —世界の森林生態学者・藤森隆郎さんと11年ぶりの再会

今回の来日のハイライト。2021年に出版した私の『多様性〜人と森のサスティナブルな関係』に詳細で心のこもった素晴らしい書評を書いていただいた藤森隆郎さんに、つくば市で念願の再会を果たし、2人だけで2時間近く、親密に、日本の森のことを中心に、いろんな話をしました。

藤森さんの書評:
https://note.com/noriaki_ikeda/n/n0821d5634526?magazine_key=me81f176b0158

一番印象に残ったのが、藤森さんの次の言葉です。

「研究者は、積極的に自分の垣根を超えて交流しなければならない」

藤森さんは、多くの研究者が「それは自分の専門外だ、と言って、自己求心的になり自己保守している」嘆いていました。高い垣根を築いて自分を守っている、ということです。

私は以前から、垣根を超えた「インターディスシプリン(学際性/分野横断)」や垣根を取り払った「アンチディスシプリン(脱専門性/分野融合の研究)」の大切さを感じていたので、意気投合しました。

研究者のコミュニケーションの多くが、「わかっていること」「判明していること」をベースに行われています。学術的な裏付けに基づいて確実にものを言うことが、研究者の一つの重要な役割だからです。しかし一方で、「わかっていないこと」「未知の領域」を探求することも研究者の重要な役目です。ときには大胆な仮説を立てて、他の研究者と対話・議論し、研究に取り組むことではじめて、新たな発見があります。世の中まだまだ、わかっていることより、わかっていないことの方が多いのですから、わかっている「快適ゾーン」を勇気を持って飛び出して、わかっていない「不安定ゾーン」にてオープンに、敬意を払って、分野横断&融合的に対話することが重要だと思います。

藤森さんが言う研究者の「垣根」には二重の意味があります。前述の他分野と間にある垣根と、もう1つは、世間一般との境に築かれた垣根です。藤森さんは「研究者は、その学術的知見を、一般社会に対してわかりやすくソフトに伝えることをしなければならない」と言われました。研究職引退後も長年会長を務められている国民森林会議では、限られた予算のなかで、そのことに尽力されています。

その他、「花粉症対策」を盾に短伐期皆伐再造林が進められようとしていることへの森林生態学的観点での問題点や、枯れ木や倒木が持つ森林保水の観点での意義(チューリッヒ工科大学の最新の研究)など、ホットな話題についても、有意義な意見と情報の交換ができました。それらの内容も、機会をみて報告していきます。



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