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世界に拡散する宮脇メソッド

自然エネルギー信州ネットの浅輪さんの投稿で、世界的に有名な生態学者の宮脇昭先生が、2021年7月16日に亡くなられたことを知りました。

宮脇先生が生み出された植樹方式「宮脇メソッド」は、とりわけここ数年、インド、北米、ヨーロッパなど、世界中にその実践が広がっています。

5平米からテニスコートくらいの小さな敷地で、その土地の潜在自然植生のミニ森林「Tiny forest」を造成する手法です。日本の神社やお寺などの側にある鎮守の森がそのモデルです。林業の「均質」な植林とは違い、「多様」な樹種を密植して植樹し、素早い縦方向の成長を促し、多様な樹種の性質による自然淘汰機能によって、除伐も間伐も通常、必要とせず、自然の状態に近い森ができていきます。私がドイツで学んだ近自然的森林業での、多様な光環境を創出して多様な樹種の不均質な旺盛な天然更新を促し、多様性による自然淘汰を活用する森づくりと通じるものがあります。

私が住む中央ヨーロッパでも、ここ3年くらい、ドイツやオランダやフランスなどで、大学の研究室、市民団体、スタートアップ企業など、様々な人や団体が、住宅や工場の空き地や荒地、耕作放棄地などに、宮脇メソッドに基づいた「tiny forest」をつくり始めています。

地球温暖化を抑制していくためには、排出量を削減するだけでは不十分です。アクティブにCO2を固定する自然を増やすことが必要です。森林はその有望株です。小さな空き地で、土づくりからはじめて、植樹から2、3年後は維持メンテナンス作業がほとんど必要のない、誰でも簡単にできる宮脇メソッドは、幼稚園や学校、市民グループや企業の環境社会プロジェクトとして注目が集まっています。多くの人々が気軽に参加でき、CO2固定に具体的に貢献できます。

宮脇メソッドの限界やデメリットも指摘されてはいますが、メリットの方が上回っているので世界中に拡散しているのだと思います。1つひとつは小さいミニ森林。しかし、ドイツで20年前に始まり、エネルギー市場を大きく変えるウネリに発展した市民主体の小さな無数の再生可能エネルギー事業と同じように、「tiny forest」の実践が、世界中で地域分散型で、同時並行で広がれば、大きな効果が生まれるでしょう。植生が多様で豊かな森は土壌も豊かになり、豊かな土壌のCO2固定能力が高いことが、近年の科学研究でわかってきています。

宮脇メソッドのミニ森林のメリットは、温暖化防止効果だけではありません。生物多様性の創出も促し、その場所の微気候もよくし(寒暖の差が少ない、適度な湿度など)、何より参加するたくさんの人々に喜びと生きる力を与えます。

宮脇先生は、1958年から60年にかけてドイツに留学されて、帰国後に、潜在自然植生による森づくりを提唱されましたが、当初は理解者が少なく、「ドイツかぶれ」と非難を浴びることもあったようです。他のパイオニアと同様に、最初は大変な苦労があったようです。

信念とビジョンを持って偉大な業績を残された宮脇昭先生は、先月、私たちの世界を去られましたが、氏の想いと、苦労して蓄積されたノウハウは、これから益々、世界中で広がっていくでしょう。

下記のリンクは、ドイツにおける宮脇メソッドの実践団体の代表例です。

https://www.citizens-forests.org

https://tinyforests.de

https://idw-online.de/de/news731347

写真は、過去に宮脇先生と一緒に横浜国立大学で植樹をされた自然エネルギーネットの浅輪さんから、ありがたくいただきました。

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