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美はサステイナブル

ドイツの神学・哲学者J.Hartlの本に触発されて、建物の「美しさ」について、考えを巡らせています。

多くの古建築物は、市民も来訪客も、多くの人々を魅了し続けています。現代建築でも、人々の目を引き、感嘆させるものもありますが、人の目に留まらない、立ち止まって写真を撮ろうとは思わない建物が大半なのではないでしょうか?

J.Hartlは「 美は通常、よりサスティナブルだ」と主張しています。

大事に扱われ、現代まで大切に維持されている古い建物のデザインには、調和、愛情、スピリチュアリティの追求が感じられます。建築やインテリアデザインで「古」と「新」が隣り合わせ、もしくは組み合わせになっているものを、意識して写真に撮りました。また、過去に撮った写真の中からも、それらを探してみました。写真を比較すると、古い建築の美しさに敬意を払って、調和・融合しようとしている現代建築やインテリアデザインもあれば、違いを敢えて目立たたせている自己顕示欲が強い現代建築もあります。または、都市計画の規制に沿って、高さと壁面のラインだけある程度、既存の古建築に合わせれば、あとは関係ない、という印象を与えるものも。機能性やコストパフォーマンに還元された無機質なものが多い現代の建築物は、Form follows funktion。「スリムでカッコいい」という印象は与えても、Funktion follows beauty でつくられた昔の建物のような「温かさ」や「落ち着き」は与えてくれないものがほとんどです。後世にも愛され、補修され、維持されていく現代建築は、果たして、どれくらいあるのか?

人々が「心地よい」と感じる「美」がある街や空間は、統計学調査によると、傾向的に、コミュニティが活性化し、犯罪も少なくなり、持続可能な発想も生まれやすくなるそうです。

Funktion follow beauty。 美しさや温かかさは、資本主義市場経済の収益計算や決算には、ほとんど反映されません。でも、人々を魅了し続ける美しい古建築物は、長期に渡って、様々な富を多方面に与えています。「時は金なり」という言い回しは一般的ですが、「美は金なり」という言葉もあってもいいと思います。「美しさ」は、お金だけに還元すべきものではないですが。

古い建物のデザインとラインに敬意をはらって立ち並ぶ現代建築。
左の赤い建物は、築100年以上。改修されて大事に使われている。右の建物は果たして改修されて使われ続けるか?それともスクラップアンドビルド?
昔の建築には、曲線や6角、8角があるが、戦後の建築は直線と3角と4角だけ。
木組の古い建築のディテールは、機能性も美観も両方備えている。一方で背後の現代建築は、すっきりしているが、その分、そっけない感じもする。
木組の愛らしい古建築の背後に、機能的な四角いモダンな住宅
ハンブルクの旧倉庫街に建てられたエルプ・フィルハーモニーの古いレンガとモダンな素材が組み合わさった奇抜で壮大な建物。当初の計画の10倍の建設費(約8億ユーロ)がかかったが、多くの訪問客を魅了している。次世代も魅了する数百年の資産になるか?
300年の古材にモダンな建具が、お互い引き立てるように、調和的に融合している。


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