しくじり先生に出演したTAIGAから見えてくる、市場価値の高い芸人の条件とは

 オードリー、カズレーザー、ぺこぱ。この3組の芸人から連想されるピン芸人といえば。パッと名前が思い浮かぶお笑い好きは、結構多いのではないか。

 彼らがまだ世に出る前、ブレイク前からお世話になっていた先輩芸人。彼らの口から頻繁にその名前が出てくるのが、ピン芸人のTAIGAだ。

 今年で46歳を迎える昔の男前の顔立ちをしているベテラン芸人。パッと見では何かしらキャラがあるような感じだが、その見た目は実年齢より確実に若く見える。10年以上前からネタ番組などにはちょくちょく出演していたため、名前くらいは聞いたことがあるお笑い好きはいるのではないか。

 しかし、売れっ子芸人たちの後押しも虚しく、現在まで、彼らの師匠であるTAIGAに売れそうな匂いは、申し訳ないがほとんどしない。これまで何度もテレビやラジオなどで見てきたが、ブレイクの予感を感じさせたことはない。

 先日のしくじり先生を見ていても、こちらのイメージを覆すようなインパクトを与えることはなかった。これまでと同じ感想を抱いた。その日の主役はTAIGAのはずだったが、そこで活躍したと言えるのは、若林であり、澤部であり、アルコ&ピースだった。

 自分から笑いが取れない。自分発進で笑いを生み出せない。TAIGAが売れない要因はこれに尽きる。サッカー的に言えば、自らドリブルで運んでシュートまでもっていけない。個人の力で「得点」を奪うことができないところが、最大の弱みになる。

 誰かにいじってもらわなければ始まらない。独自性のある言葉を使ったトークができない。コンビやトリオの1人ならともかく、このタイプで売れているピン芸人はまずいない。岡野陽一、ヒコロヒーなどと比べると、トーク力の差は明白になる。

 過去にしくじり先生に出演した芸人と見比べても、その違いはより鮮明になる。

 しくじり先生で大活躍し、その商品価値を上げた芸人。想起するのは2016年9月に初出演したさらば青春の光だ。それまでコントのイメージが強かったコンビだったが、このしくじり先生での出来栄え点はかなり高かった。10点満点でいえば8〜9点。特に活躍が目立っていたのが、ネタを作っている森田哲矢になる。事務所を辞めた後の苦労話を自虐的に鋭く捲し立てる姿は、その後の飛躍を感じさせるには十分なものだった。文句の付けようがない活躍とはこういう感じだろうか。その放送後の2017年くらいから、深夜番組だけではなくゴールデンの番組にもよく出演するようになった。現在は森田のピンでの活躍も目立っている。このしくじり先生での評価は相当高かったのではないかと筆者は密かに思っている。

 最近で言えば、マヂカルラブリー、ミルクボーイ、錦鯉、オズワルド、ウエストランド等々、近年のM-1ファイナリストたちが続々と出演を果たしている。

 M-1王者のマヂカルラブリーとミルクボーイも面白かった。その出来栄えをあえて採点すれば、ミルクボーイが7で、マヂカルラブリーが8となる。
 
 M-1王者の2組がその結成から優勝までの軌跡を、苦労話を交えながら面白おかしく話していく内容だったが、面白さ的にはマヂカルラブリーの方がミルクボーイをやや上回っていたとはこちらの感想になる。野田クリスタルがウケなかったピン芸人時代に思っていたこと「面白いから、スベっているんだ」という言葉が中でも一番印象に残っている。この発想の転換ともいえる哲学的な言い回しで、爆笑を連発していた。

 錦鯉、オズワルド、ウエストランドの回でも、それぞれの良さがふんだんに出ていた。ウエストランドの放送回では、河本がメインの話にもかかわらず、その相方・井口の活躍の方が目立っていたくらいだ。そこにレギュラーである吉村や澤部らの絡みにより、さらに良い味付けになっていた。

 彼らは自分たちの良さを存分にアピールすることに成功した。少々うまくいかなくても、どうにかして笑いに変えようとする力を潜在的に備えていた。

 TAIGAとの違いでもある。ピン芸人にもかかわらず、笑いは他人任せ。これではダメだ。例えばダウンタウンDXに出演して活躍しそうな姿が全く想像できない。1人で振ってキチンと落とす。そうした年齢に見合うような技術を持ち合わせていないのだ。

 そもそもTAIGAとはいったい何なのか。お笑い芸人的に言うならば、どのポジションで、どんなことをしている時が一番、輝いて見える瞬間か。何の武器を最大の拠り所に、お笑い界に打って出て行こうとしているのか。そこに不透明さを抱えている。

 面白い芸人にはそれぞれの笑いの取り方や笑いを取る姿がなんとなく想像できるが、面白くない人にはそれができない。TAIGAが面白いというより、TAIGAとからむオードリーやぺこぱの方が面白く見えてしまう。TAIGAが単独で笑いを起こす姿が思い浮かばないのだ。

 現在のTAIGAがブレイクするには、もはやアメトーークで「TAIGA芸人」をやるしか思いつかない。「肥後という男」、「RG同好会」、「椿鬼奴クラブ」、「小沢という変人」、「東京03飯塚大好き芸人」……。これらの企画でフィーチャーされた芸人が活躍したように、TAIGAがブレイクするにはもうこれしか道はない(たぶん加地さんはやらないと思うが)。

 さらば青春の光、マヂカルラブリー、錦鯉、オズワルド、ウエストランドらは、それぞれが自分たちの力でゲストを笑わせることができる。他の出演者からの助けがなくても、己のトーク力やキャラクターを武器に場を盛り上げることができる。売れていない芸人との違いはそこにあると言ってもいい。

 自分で笑いを生み出す決定力、破壊力、スピード感、迫力、馬力、トークの切れ味等々。こうした要素を身につけている芸人の市場価値は自然と高くなる。ブレイク前の芸人が最も備えるべき活気というものを、どれほど感じさせることができるか。芸人の将来を見極める重要なポイントだろう。しくじり先生は、そうした芸人たちの力を見極める絶好の機会になる。

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