バルセロナ対ベンフィカ戦寸評。シャビ新監督は大丈夫?バルサ復活の道は険しい

 シャビ新監督の就任2試合目。チャンピオンズリーグ(CL)グループリーグ第5節、バルセロナ対ベンフィカの一戦は、今後のバルサの行方を占う意味でも、かなり重要な試合だった。試合前の両チームの勝ち点は、バルセロナ(6)に対して、ベンフィカ(4)。この試合でバルサが勝てばグループリーグ突破が決まるが、引き分け以下に終わると一転、決勝トーナメント進出が危うくなる、まさに目が離せない試合に相当した。

 結果は0対0。それなりに緊張感はあったものの、全体的にはやや低調な内容の試合だった。その原因がどちらにあったかと言えば、ホームのバルサになる。引き分けでも最悪オッケーのアウェーのベンフィカがやや引き気味に構えてくれたにも関わらず、バルサはうまく試合を進めることができなかった。

 ボール支配率は、バルサ61%対ベンフィカ39%。バルサは例によってボール支配率で上回ったが、その割にチャンスは少なかった。むしろチャンスの数で上回ったのはベンフィカ。前半34分、コーナーキックからのロマン・ヤレムチュクのヘディングシュート。そして、後半のロスタイムにカウンターから持ち込み、最後キーパーをかわして放ったハリス・セフェロビッチのシュート。この2つの決定的なチャンスのどちらかが決まっていれば、おそらくベンフィカが勝っていた。僕はそう思う。バルサが押しまくった末に、運悪くスコアレスドローに終わったわけでは全くない。両者はそれなりにいい勝負をしていた。むしろツキがなかったのはベンフィカの方になる。

 なぜバルサは点を取れなかったのか。試合後、「決定力を高める必要がある」と述べたシャビ監督だが、決定力よりもこちらの目に付いたのは、それに至るチャンスそのものが少ないことだ。最も惜しかったのは、後半22分。交代出場したウスマン・デンベレが右サイド深く侵入し、その折り返しを中央に飛び込んで合わせたフレンキー・デヨングのヘディングシュート。決定的なチャンスはほぼこれだけだった。

 なぜこれが唯一得点の匂いがしたチャンスだったのか。それは、サイド奥深くからのマイナスの折り返しだったからだ。サッカーにおける、最も得点の可能性が高いプレー。そして、バルサが長年こだわり続けてきたプレーでもある。だが、こうしたプレーを拝むことができたのは、ウイングタイプのデンベレが投入されて以降。タッチライン際に張って構える彼の存在なしに、このチャンスは生まれなかった。

 デンベレが投入されるまでの間、この日のバルサの布陣は、伝統の4ー3ー3ではなく、3ー4ー2ー1だった。そして、その3ー4ー「2」ー1の「2」を務めたのは、19歳のニコ・ゴンザレスと、17歳のガビ。だが、この2人がサイドに開くことはほとんどなく、多くの時間、真ん中にポジションを構えることが多かった。サイドを担当していたのは、「4」のウイングハーフを務めたユスフ・デミル(右)とジョルディ・アルバ(左)。両サイドからの深みのある攻撃は、この2人が高いポジションを取らない限り、ほとんど望めない状況だった。

 もちろんデミルとアルバが高い位置でボールを受けることは何度かあった。しかし、そこで彼らが周りと連携しながらサイドを崩すシーンはほぼゼロ。サイドからの攻撃は、ほぼ彼ら個人の突破力に委ねられた。相手が2人、3人いる状況では、そこを1人で掻い潜ることは不可能。よって、サイドの深い位置に侵入することはできず、攻撃は自ずと真ん中に偏った。得点の匂いがしない、ワクワクしない試合内容になった。

 途中からデンベレが入ったことで、右サイドはなんとか機能し始めたものの、それでも彼とうまく絡むような選手は誰一人見当たらなかった。唯一にして最大のチャンスも、デンベレ個人の力によるもの。意図的に彼を活かそうという様子は、結局最後まで見てとることはできなかった。

 このサッカーでは危ない。率直にそう思う。グループリーグ突破のかかる最終節で対戦するバイエルン・ミュンヘンには、まず勝てないだろう。最終節では、すでにグループリーグ最下位が決定しているディナモ・キエフとの対戦を残すベンフィカの方が、僕には優位に見える。ベンフィカが勝利した場合、バルサは引き分けでは敗退する。自力で決勝トーナメント進出を決めるためには、アウェーでバイエルンに勝たなくてはならない。すでにグループ首位通過を決めているバイエルンだが、バルサ戦には果たしてどう挑んでくるだろうか。バイエルンにとっては消化試合だが、バルサにとっては生きるか死ぬかのまさに大一番になる。バイエルンが手を抜けばバルサの機運も高まるが、普通にぶつかってくれば、おそらくバルサはやられる。このベンフィカ戦を見せられると、とりわけそう思う。

 シャビ監督のこだわりはどこにあるのか。少なくともこの試合では、そうしたものが見えなかった。ジョゼップ・グアルディオラ退任以降、失ってしまったバルサらしさを、もはや拝むことはできないのか。サイドをもっと有効に使っていれば、この試合のボール支配率はおそらく70%近くには達していたと思う。もっと一方的に攻めることもできれば、相手に決定的なチャンスを与えることもなかった。

 コンビネーション良く両サイド崩した攻撃は、90分を通してほとんど見られず。さらに言えば、苦戦していたにもかかわらず、選手を3人しか代えられなかった点もいただけない。交代枠を2つも余らせる監督に、大きな成功の匂いは感じないのだ。

 シャビ・バルサは大丈夫か。就任してからまだ2試合なので、判断するにはまだ早いが、少なくともこのままでは危ない。リーグ戦でも現在7位と苦しんでいるバルサだが、チャンピオンズリーグ出場圏内(4位以内)を確保できるかも、正直言って怪しく見える。メッシが去ったことで心機一転、ふたたび良いサッカーに生まれ変わるかと期待したが、今のところは五里霧中。復活の道は険しいと僕は思う。

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