M-1グランプリ2022準決勝。28組(プラス1組)の感想を述べてみた

 ベストアマチュア賞

0 深海魚(アマチュア)

 プロアマ問わずエントリーすることが可能なM-1グランプリ。今大会に参加したアマチュアの中で最も優れていたグループとして選出されたのが、大学生の妹とその兄によるこの兄妹コンビだった。準決勝が始まる直前に登場し、司会を務めるはりけ〜んずからその表彰を受けた。そしてその流れから、まるで前説のごとく彼らはネタを披露した。言わば、会場のあたため役を担ったというわけだ。すでに敗退は決まっていたが、この準決勝ではあえて「0番目」に登場したという言い方をさせてもらう。そう言いたい理由は、彼らのネタが面白かったからだ。準々決勝でも目にしていたのでその実力は知っているつもりだったが、この準決勝の戦いに加わっても、決して見劣りはしなかった。ボケのセンスも悪くないし、男女コンビでは珍しく女性側がツッコミ役というのも新鮮味を感じさせた。今後はプロを目指すと述べていたが、はたして再びこの舞台に立つことはできるか。つい名前を覚えておきたくなる存在。準決勝の盛り上げ役を果たした彼らに拍手を送りたい。

グループA

1 金属バット(吉本興業 大阪)

 「GYAO!ワイルドカード枠」により、準決勝に復活する権利を得た金属バット。この枠で出場したグループは、準決勝のトップバッターを務めることは決まっている。しかし今回は彼らの前に、先ほど述べたベストアマチュア賞の深海魚がすでにしっかりとネタを披露していた。それにより、会場はある程度ほぐれていた。ラストイヤーの金属バットに対して、最大限良い環境でネタができるようにと、運営側による配慮が施されていた。そして最大限、彼らは頑張った。そう悪い出来ではなかった。選ばれても不思議はなかったが、「決勝確実」と呼べるレベルには達してはいなかった。M-1という出世ルートを失った彼らは、はたして今後どのような道を歩むのか。才能ある大阪の実力派コンビをこのまま埋もれさせることは少々もったいない。また何らかの形でその活躍を拝みたいものである。

2 カゲヤマ(吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。準々決勝は越えられたが、この準決勝ではその単調さがうまくはまらなかった。

3 シンクロニシティ(フリー)

 ネタは3回戦で披露したネタの4分バージョンのもの。悪くはないのだが、この準決勝ではやはりまだ力不足という感じか。次の展開がなんとなく予測できるので、驚きがあまりなく、ネタが少々長く感じてしまった。面白いネタは時間があっという間に感じられるが、そうでない場合は、申し訳ないがその逆になる。もうひとつ言うとすれば、ツッコミが普通すぎること。ボケ役の女性が無機質に振る舞うタイプだけに、ツッコミ役の男性のキャラが薄ければ、ネタは余計に味気ないものに見えてしまう。ここからどう改善を図ってくるのか。来年以降に期待したい。

4 ママタルト(サンミュージックプロダクション)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。見た感じポップで面白そうなネタなのだが、決勝に行かせるにはまだ深みに欠けた。ボケのキャラクターが先行する漫才は、やはりなかなか難しい。すでに錦鯉という先客もいる。もっと爆発的に面白くなければ、決勝には辿り着けない。言い換えれば、それができれば決勝が見えてくる。いまの調子で露出を続けていけば、近いうちにこの壁を越えられそうな気配はある。

5 ハイツ友の会(吉本興業 大阪)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。準々決勝の大阪予選では大ウケしたが、この東京ではイマイチはまりきらず。そのセンスの良さは十分認めるが、決勝を戦うにはやはりまだパワー不足な感じは否めない。お手本にすべきは、今回初めてファイナリストに名を連ねたタイタン所属のコンビ、キュウだ。彼らもかつては声を張らないしっとりとしたスタイルをとっていたが、今回はその辺りを微調整したおかげで、見事に決勝進出を果たしている。ハイツ友の会も、スタイルや方向性を特に大きく変える必要はない。もう少し見る側が笑いやすくなるような調整が施されれば、決勝戦は十分狙える。今後も気に留めておきたい女性コンビに変わりはない。

6 THIS IS パン (吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。つまらなくはないのだが、どこかで見たことあるような普通の漫才という印象が、やはり一番にくる。もう少しオリジナリティがなければ、決勝に進出することは難しい気がする。

7 カベポスター (吉本興業 大阪)

 彼らの前に登場したコンビがどれもいまひとつだったので、このカベポスターの弾けっぷりは余計に目立った。ネタを終えた段階で、決勝進出当確を感じさせたコンビ。もっと言えば、今大会の優勝候補の一角だと僕は見る。準々決勝と準決勝。この2つの舞台でそれぞれ異なるネタを披露しながら、そのどちらでも爆笑を起こしてみせた。安定感は随一。大阪の正統派コンビへの期待は大きい。

グループB

8 令和ロマン(吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。本ネタに入る前の掴みではW杯で起きた時事ネタを取り入れるなど、そのお笑い能力の高さも見せつけていた。そのウケ方を見た感じでは決勝に行ってもおかしくないと思っていたが、今回は運がなかったという感じか。もしかしたら最初に時事ネタなど入れず、自信を持って本ネタ一本で勝負すべきだったのかもしれない。負け方は悪くなかった。次のネタも見てみたいと思わせる姿を見せた。

9 真空ジェシカ(プロダクション人力舎)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。昨年よりもそこまで大幅に面白くなったというわけではない。それでも、昨年の決勝進出が彼らにとって大きな自信になったことだけは確かなようだ。なにより面構えが1年前とは違う。自信が漲っている感じが、そのネタからひしひしと伝わってくるのだ。彼らの決勝進出に貫禄を感じたのは僕だけではないと思う。昨年の準優勝コンビ、同期でありライバルのオズワルドを、この準決勝では確実に上回った。決勝ではもうひとつ、異なるネタも見てみたい。

10   かもめんたる(サンミュージックプロダクション)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。出来は悪くはなかったが、前の3組のウケが良かったので、何となくその煽りを受けたという印象。それでもその存在感は十分感じさせた。ラストイヤーのM-1、最後の舞台(?)となる敗者復活戦に目を凝らしたい。

11   マユリカ (吉本興業 大阪)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。面白いのだが、やはりまだリズムが単調だった嫌いがある。ボケのパワーも、もう一息足りなかった感じ。次の出番のキュウに、絶好のチャンスをプレゼントしてしまった。

12   キュウ (タイタン)

 今回の準決勝で最も面白かったコンビを1組挙げよと言われれば、筆者は迷わずこのキュウを推す。初めて見たネタだったこともあるが、そうした事情を差し引いても滅茶苦茶面白かった。加えて、彼らはその前の準々決勝でも、通過は間違いなしと言いたくなるような構成の美しい、面白いネタを見せている。カベポスターにも言えることだが、2戦続けて異なる面白いネタを見せたコンビへの期待値は、当然のことながら高くなる。緊張と緩和。この緩急を活かした雰囲気作りといい、ネタの内容といい、文句のつけようがない。個人的には優勝候補の筆頭だと見る。同じ事務所(タイタン)のウエストランドも今回は期待度の高いネタをするので、この2組が優勝を競い合う展開も決してなくはない。このタイタン対決こそ、今大会のカギを握る大きな注目ポイントだと僕は見ている。彼らが良い順番でネタができることを祈りたい。

13   ミキ (吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。かつてのファイナリストながら、その面影はもはやどこかに消えた状態にある。この準決勝でも、その出来ははっきり言って後ろから数えた方が早い内容だった。近年急激にレベルが上がった周りのライバルたちに、もはや大きく離されてしまったという感じに見える。知名度は全国区なので敗者復活戦には希望がありそうに見えるが、今回はそこにオズワルドがいる。オズワルドを確実に上回らない限り、ミキの復活はない。3年ぶりの準決勝進出ながら、ネタに関してはその力不足を露呈させてしまった。少なくとも3度目の決勝進出の気配は今のところ全くない。捲土重来に期待したい。

14   ヨネダ2000 (吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。準々決勝とは異なり準決勝は生配信されていたので、準々決勝ではカットされていた部分を含め、ネタを全てキチンと目にすることができた。もちろん面白かったが、少なくとも上位での通過ではないと僕は思う。通過した9組中、たぶん7〜9位の間ではないかとはこちらの見解だ。多少大雑把に言えば、昨年のランジャタイと似たようなムードを彼女たちも備えている。審査員泣かせのコンビ。怖いもの見たさのコンビと言ってもいい。決勝戦、審査員が彼女たちのネタにいったいどのようなコメントを述べるのか、今から楽しみだ。

グループC

15   ケビンス(吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。ひと言で言えば、オーソドックスなコント漫才だ。あえて悪く言えば、普通。ボケ役のキャラをそれなりに押し出してはいるが、それでも特別感はまだない。15年前であれば可能性はあったかもしれないが。次回の変貌に期待したい。

16   ダンビラムーチョ(吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。彼らが得意そうな歌ネタで勝負にきたが、準決勝ではうまくハマらず。もしかしたら選曲がややマニアックだったのかもしれない。もう少し誰もが知っているような曲であれば、そのウケはもっと良くなるはず。歌ネタはボケの手数が限られるので、ひとつ外すと後半がどうしても苦しくなる。敗者復活戦で披露するネタにも目を凝らしたい。

17   ダイヤモンド(吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。ウケはそこまで爆発的というわけではなかったが、このネタの着眼点は面白い。また新しい種類の“ヘリクツ漫才”を見たという感じだ。このダイヤモンドが決勝に進出したということは、彼らの評価が総合的に高かったということ。そのネタの目の付け所の良さを、今回審査員は評価したのだと思う。ただ、彼らが決勝で弾けそうかと言えば、正直難しいのではないかと筆者は答えるつもりだ。準決勝の通過が際どく見えたコンビが、決勝で大きく弾ける可能性はそれほど高くはない。スタイルは正攻法なので、できれば決勝でトップバッターを任せてみたいとはこちらの意見だ。審査の基準としては申し分ない。2本目に隠しているネタも気になるところだ。

18   ビスケットブラザーズ(吉本興業 大阪)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。(決勝に)行ったかもしれない、そう思わせる出来ではあったが、審査員は彼らの前に登場したダイヤモンドの方が良かったと判断した。内容もそれほど悪くなかったが、あえて言えば、やはり少しコントっぽく見えてしまったところではないか。本来コントとしてやりたかったものを、少々強引に漫才という形にして披露した。いま振り返ると、そうした印象が決してゼロではなかった。審査員もその辺りの匂いを感じ取っていたのではないか。そうでなければ、話題性抜群の現役キングオブコント王者を簡単には落とさないはず。たた、これで敗者復活戦の行方は少しわからなくなってきた。前回準優勝のオズワルドに加え、コント王者(ビスケットブラザーズ、かもめんたる)もいる今回の敗者復活戦。この国民審査にはとりわけ注目したい。

19   ヤーレンズ(ケイダッシュステージ)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。準々決勝と同じくらい、ウケは悪くなかった。準決勝の詳しい審査内容は知らないが、おそらく僅差だったと見る。少なくとも下位ではなかったはずだ。そうした意味でも注目すべきは敗者復活戦。ほぼ無名の彼らが選ばれる可能性は限りなく低いが、ポイントは選ばれるかどうかではなく、そこでどのくらい面白いネタを見せるのかだ。そこで人気者を上回るネタを披露できれば、ある程度良い順位には入ることができる。少なからず視聴者の記憶に残る存在になることができる。ヤーレンズはそれを目指すべき。敗者復活戦の上位3組までに入ればシメたもの。5位以内でも大健闘。敗者復活戦での活躍を期待したい。

20   ななまがり(吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。可能性はなくはなかったが、さすがにネタが何でもありというか、無茶しすぎたか。これがななまがりのスタイルといえばそれまでだが、少なくとも敗れ方は悪くなかった。そのらしさ、カラーを全開にしたという点には好感が持てる。どんなネタがしたいのかよくわからないコンビより、可能性を感じるのは彼らのような自分たちのスタイルを全面に押し出すタイプだ。少し話は変わるが、ななまがりは、今年のキングオブコント準決勝でも、悪くない、こちらに惜しいと思わせる散り方をしている。今年行われたこの2大会で、立て続けに惜しい負け方をした。来年は決勝に進出してもおかしくない。そんな期待を抱きたくなるが、そんな彼らもM-1では次回がラストイヤーとなる。最後となる来年の決勝に進出するためには、今回の敗者復活戦で、可能な限りよい姿を見せる必要があると筆者は考える。復活する可能性は低いと思うが、次回に繋がる良い負け方ができればシメたもの。今後の台風の目になることを期待したい。

21   ウエストランド(タイタン)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。さらにはネタの順番も準々決勝と同じ、ななまがりの直後だった。ななまがりもウケてはいたが、ウエストランドはそれ以上だった。理由は定かではないにせよ、準々決勝よりも乗っていたのは明らか。今回数少ない「決勝当確」を感じさせた1組でもある。前回の決勝はいわゆるダークホース的な存在だったが、今回は違う。優勝候補の一角だと僕は見ている。その理由はわかりやすい。ネタに勢いがあるからだ。もっと言えば、ウエストランド・井口浩之に勢いがある。2年前の決勝進出を機にその露出はある程度は増えていたが、井口の存在感はここ半年くらいの間でさらにまた上昇した印象を受ける。キャラが浸透したことで、そのネタはまた一段とパワーアップした感じだ。褒めすぎを承知で言えば、かつてのウーマンラッシュアワー。ネタを作っている井口がひたすら喋りまくり、その横で脇役に徹する台詞の少ない河本太。ウエストランドの漫才を見ていると、あの9年前のTHE MANZAI王者をふと思い出させる。これまで小物的な存在だったウエストランドが多くの人気者たちを差し置いて優勝すれば、まさに痛快劇そのもの。世間の評価をひっくり返すことができるか。決勝戦での爆発に期待がかかる。

グループD

22   さや香 (吉本興業 大阪)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。準々決勝でも面白かったが、準決勝でも相変わらずよかった。両者のぶつかり合いが面白い、正統派のしゃべくり漫才だ。ランジャタイやヨネダ2000のような、これまで見たこともない斬新なスタイルでは全くない。何十年も前から存在する、言ってみればクラシカルなタイプのネタだ。多種多様な漫才が存在する近年のM-1のなかではややレトロな感じのスタイルだが、その分、逆に新鮮というか、この中でひときわ輝いて見えたことは確かだ。彼らが初めて決勝に進出したのは5年前の2017年。その時はまさにオーソドックスなタイプのネタだったが、そこからまさに大きくパワーアップして帰ってきたという印象を受ける。いい意味でより大胆なネタをするようになった感じだ。1度の決勝進出はまぐれと言われる可能性もあるが、2度進出したとなるとそうはいかない。5年前の予選はわからないが、今回は実力勝ち。前回(5年前は決勝7位)以上の成績を収める可能性は高いと見るが、はたして。

23   ストレッチーズ(太田プロダクション)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。出来は悪くなかったが、ウケが少し足りなかったか。その前がさや香だったので、やはりパワー不足な感じは否めなかった。ネタの内容も、なんとなくどこかで見たことがありそうな感じにも見えた。決勝戦の舞台はまだ遠かった。

24   コウテイ(吉本興業 大阪)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。出来は決してよくなかったので、敗退は妥当。そもそもこのネタで彼らが準々決勝を通過したこと自体、こちらにとっては意外だった。シンプルな実力負け。次回の巻き返しに期待したい。

25   オズワルド(吉本興業 東京)

 準々決勝とはネタを変え、こちらが目にしたことがないネタで勝負をかけてきた前回の銀メダリスト。彼らの前のコウテイ、さらにその前のストレッチーズよりは、確かに面白かった。だが、このグループの最初に登場したさや香には僅かに届いていなかった。決勝進出の確率は40%。オズワルドのネタを見た直後に抱いた、こちらの率直な印象になる。出番順は後半と悪くなかったが、前回の自分たちを超えることができなかった。ひと言で言えばそうなる。今年大ブレイクしたが故に、ネタを磨く余裕がなかったのかはわからないが、出来が粗い印象は否めなかった。ネタの完成度で言えば、今回はカペポスターやキュウの方が明らかに上回っていた。だが、オズワルドはまだここで終わりではない。優勝候補の彼らにはまだ敗者復活戦という、文字通り復活の“裏道”が残されている。もちろんまだ選ばれると決まったわけではないが、その確率は少なく見積もっても30%はある。おそらく本人たちも復活する気満々のはずだ。今回初となる敗者復活戦に、いったいどのような姿を見せるのか。周りとの絡みなども含め、目を凝らしたい。

26   ロングコートダディ(吉本興業 大阪)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。両者が交互にボケ合う、俗に言うダブルボケ漫才だ。昨年の決勝とは少しスタイルを変えて挑んできたわけだが、ネタが面白いことはもちろん、もう一つの特徴を言えば、わかりやすいということだ。中学生のときの自分が見れば、おそらく一番面白いと述べるのではないか。それくらい、シンプルで理解しやすいネタだ。コントではどちらかと言えば濃いネタをするロングコートダディだが、このM-1では昨年も含め、ネタがあっさりしているという印象を受ける。前回は惜しくも4位で最終決戦進出を逃したが、その評価自体は決して低くなかった。審査員の好みで落とされたという感じだったが、審査員が変われば話は変わる。彼らにも可能性は増える。準決勝でのネタを見せられると、決勝ではそのネタを含む2本のネタを見てみたいという気持ちは増す。昨年以上の活躍を期待したい。

27   男性ブランコ(吉本興業 東京)

 ネタは準々決勝で見せたものと同じ。ボケの手数は少ないが、一発のパンチが大きい、発想力を生かした男性ブランコらしいネタというべきか。今回の決勝進出は、まさにその発想力で勝ち取ったようなものに僕には見える。そこまで優れたネタかと言えば答えるのが難しいが、とは言え、彼らに流れがありそうなことは、昨年からなんとなくではあるが見えていた。初めて準決勝に進出した前回の成績は、敗者復活戦3位。復活こそならなかったが、M-1常連ではない彼らが人気者の見取り図やニューヨークなどを国民投票で上回ったことは、その期待値が高いことを証明した格好だった。昨年キングオブコントで準優勝したとき、まさかその1年数ヶ月後にM-1ファイナリストになるとは正直思わなかったが、これにより彼らの評価が大きく高まったことは事実。もしこのまま優勝すれば、彼らがデビューした2011年の同期芸人の顔ぶれはすごいことになる。活躍を期待したい。

28   からし蓮根(吉本興業 大阪)

 スタイルはこれまで通りのオーソドックスなコント漫才。準決勝進出は今回で6年連続6度目。年々最高値を更新し続ける近年のM-1において、この成績は特筆に値する。だが一方で、その2度目の決勝進出へのムードはいまひとつ高まらない。面白さは認める。しかし、ここをこうすれば行けそうだという、その改善案がなかなか思い浮かばない。それでも、あえて言えば緩急だろうか。ネタのリズムはどのネタもだいだい同じだ。どこでどうボケるか、見る側はなんとなく予想はできる。そこで予想外のボケが出てくれがいいが、そのパンチ力がいかんせんまだ弱い。次に決勝進出をはたした時が、言わばこちらの想像を超えるネタをした時。その時が訪れることを楽しみにしたい。

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