ロンドンハーツ。ゴールデン3時間スペシャルより面白かった深夜の「太夫フェス」

 年の瀬も近づいてきたこの時期は、各局の人気番組がこぞってスペシャル番組を放送する。昨日(12月14日)放送されたロンドンハーツの3時間スペシャルも、そんな年末感を感じさせるような、今年活躍した人気者を多く集めていた。

 「芸人スポーツテスト」と「奇跡の1枚」。番組では毎年恒例でもあるこの2つの企画に多くの芸人たちが参加した、それなりに豪華な内容ではあった。

 しかし、そんな豪華な出演者たちに見合うような満足感をこの日の3時間スペシャルから得ることができたかと言えば、答えはノーだ。3時間スペシャルの内訳は、「芸人スポーツテスト」が2時間、「奇跡の1枚」が1時間の尺だったが、どちらがイマイチだったかと言えば、時間の長かった「スポーツテスト」の方になる。

 つまらない言い方をすれば、この「スポーツテスト」はお笑い的にはあまり見るべきモノがなかった。有吉弘行、アンタッチャブルというベテランの有力者はいたものの、出演者はここ数年ほぼ変わらないお馴染みの顔ぶれだった。

 EXIT、草薙航基(宮下草薙)、後藤拓実(四千頭身)。なかでもその力量が心配になったのは、俗に「お笑い第七世代」と呼ばれている彼らになる。それなりに喋る機会は多かったものの、特にこれといった見せ場は作れなかった。巧い。やるな! と思わず、人を感嘆させるトークや絡みはほぼゼロ。芸人らしい存在感を全く発揮することができなかった。これが正当な評価ではないだろうか。もし、彼らがこのレベルに相応しい未来のお笑い界を担う芸人というのなら、もっとトークでこちらをアッといわせなければならない。

 後藤は24歳とまだ若いため伸びシロはありそうだが、EXITと草薙はすでに30歳を超えている。特にこれといった賞レースでの実績もない。いまはまだギリ勢いを保っているが、この先ははたしてどうだろうか。正直言って危なそうに見える。草薙に関しては、その芸人としての成長は、2年前から止まっているような気さえする。ブレイクした(2019年)頃の方が、いまより明らかに良かった。他の芸人からはあまりお目にかかれない、キレのあるトークができていた。それがいまやすっかり拝めなくなっている。自分の幅の狭さを知ってしまったのか、小さくまとまってしまった感じだ。

 スペシャルの後半に放送された「奇跡の1枚」に出演したのは、田村淳とMC側のゲスト(小籔千豊、堀田真由)を除けば、総勢16人の芸人だった。プロのメーク・スタイリスト・カメラマンの手により、芸人たちを変身させる年末恒例の企画。

 今回の16名という変身人数に対して、放送の時間はわずかに1時間しかなかった。それぞれ自分の写真を紹介する番があるとはいえ、この短い時間に芸人としての実力をアピールすることは難しそうに見えた。

 その中で個人的に最も存在感を発揮したように見えたのは、昨年のTHE W 王者、ピン芸人の吉住になる。吉住を見て想起するのは、同じくピン芸人のバカリズムだ。言うなれば、女版バカリズム。その笑いの取り方に、どことなく共通した匂いを感じる。ネタのスタイルや方向性もよく似ているし、こだわりのありそうな感じや、センスに自信がありそうな感じが、バカリズムそっくりなのだ。わずか2,3ラリーのトークを見ただけでも、その実力のほどを窺い知ることができた。昨年のTHE Wの優勝から今年にかけて、数多くの番組に出演。決して派手な活躍をしたというわけではないが、どの番組に出演しても、そのポテンシャルの高さを見せつけることはできていた。近い将来、女性芸人のトップに立つことができる器だと、個人的には見ている。

 「奇跡の1枚」の方が、企画的にも面白さ的にも、「スポーツテスト」より上だった。見応えは、こちらの方が高かった。しかし、本当に面白かったのは、この3時間スペシャルの後に放送された“ロンドンハーツ”だった。スペシャルの後、報道ステーションを挟んで放送されたロンドンハーツの通常回。ここで放送された「太夫フェス」企画は、ゴールデン3時間スペシャルより遥かに面白かった。

 FUJIWARA・藤本敏史が歌やダンス、ドラマなどのリクエストに、コウメ太夫ばりの白塗りメイクで挑戦する企画。ざっくり言うとこんな感じだが、これが滅茶苦茶面白かった。この企画が初めて行われたのは今から1年前。その初回の放送も十分面白かったが、2回目となった今回は、多分前回よりも面白かったと思う。

 藤本さんの良さ、その魅力が全開になった企画。ひと言で言えばそうなる。そこに田村淳、有吉、山崎(アンタッチャブル)らがツッコミを入れながら絡むことで、より上等なものになった。やっていることはB級ながら、見ていて楽しい、満足度の高い放送。ロンドンハーツらしい内容。また来年も見てみたいと思える、そんな弾けた放送だったと僕は思う。

 藤本さんの能力の高さを再認識させられた。そういう言い方をしてもいい。人気バラエティ番組の主役として、ここまでの活躍を見せることができる51歳のベテラン芸人は他にいるだろうか。アメトーークや水曜日のダウンタウンでも活躍する藤本さんだが、個人的にはロンドンハーツでの活躍が一番好みになる。その中でも特にイジられる立場にいた方が、その輝きは増して見える。レギュラーメンバーの悪ノリから始まった「太夫フェス」企画だが、藤本さんの面白さをこれでもかと言うほど味わえる、実はとても優れた企画だった。

 ちなみに僕が今回の「太夫フェス」で一番面白かったシーンは、やはりかの有名ドラマを真似た、例の名場面になる。トラックの前に飛び出した、あの立ち姿は最高に面白かった。今年僕が見たロンドンハーツの中では、間違いなく最も面白かった放送回。これを見て、僕はまたさらに藤本さんのファンになった気がする。

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