スター不在のファイナリストの顔ぶれは順当。誤魔化しが利かない準決勝に、大会レベルの高さを見た

 M-1グランプリ2022の準決勝が終了。決勝戦を戦う9組が出揃った。顔ぶれは以下の通りだ。

 真空ジェシカ、ダイヤモンド、ヨネダ2000、男性ブランコ、さや香、ウエストランド、キュウ、カベポスター、ロングコートダディ。

 この9組プラス、(決勝戦当日に行われる)敗者復活戦を制した1組を加えた全10組で争われるM-1グランプリ2022決勝戦。10組目にどのコンビが復活してくるかはまだわからないが、昨日発表された9組の顔ぶれから抱くこちらの印象を言えば、「悪くない」となる。比較的順当だったというか、落ち着くところに落ち着いたという感じだ。

 モグライダー、ランジャタイ、インディアンス、ゆにばーす、見取り図、アインシュタイン、東京ホテイソン等々、準々決勝で有力候補が数多く落選した今大会。準決勝は例年よりも新鮮な顔ぶれが多く、戦いのレベルが落ちるのではないかとの不安もあったが、心配は杞憂に終わった。そのレベルは今回も相変わらず高かった。昨日準決勝の配信を視聴して思った、率直な感想になる。

 選出されたファイナリストの顔ぶれは順当だと先程述べだが、それは「個人的には」という話になる。ニュースなどで結果を見た人(準決勝を見ていない人)が驚くような、世間的にはサプライズに値した結果も、決してなかったわけではない。

 それはなにかと言えば、優勝候補・オズワルドの敗退に他ならない。現在3年連続で決勝に進出中の記憶に新しい前回準優勝コンビの敗退は、新ファイナリスト決定以上に、ポータルサイトで話題となっていた。もちろん結果自体は確かに驚きだが、実際に準決勝を視聴した者として言わせてもらえば、その審査が間違っていたとは全く思わない。仮に筆者が今回の審査員だったとしても、たぶんオズワルドは落選させていたと思う。もちろんつまらなくはなかったが、昨年の出来と比べると、若干物足りなかった。ひと言でいえばそうなる。悪く言えば小手先というか、うわべだけで作ったような軽いネタに見えてしまった。「これでは(決勝進出は)危ない」とは、ネタを見た直後に抱いた率直な感想になる。

 他の落選者で言えば、ビスケットブラザーズの敗退も少々意外だった。ネタの出来は悪くなさそうに見えたので決勝に行きそうな匂いもしたが、審査員はそう甘くなかった。先述のオズワルド同様、現役のキングオブコント王者に対しても容赦はなかったというか、彼らには厳しい目が向けられていた。おそらくまだ決勝のレベルに達していないと判定されたのだろう。敗者復活戦に期待したい。

 過去の実績やネームバリューなどは関係ない。そう言わんばかりの今回の結果を見ると、準決勝の審査には正当性を感じる。ワイルドカード枠で復活したラストイヤーコンビ、人気の高い金属バットや、全国区のミキなどを落選させたことも同様。そこに審査員の“本気”を感じるのは僕だけだろうか。ある程度は面白くても、ネタの仕上がりが粗いものは選びませんよ。審査員は無言でそう語っている気がする。

 他にも令和ロマン、ヤーレンズ、ななまがりなども今回選ばれてもおかしくなかったが、あと僅か足りなかったのだろう。悪くない散り方をした彼らは、次回も期待できる有力な候補だと見る。

 今回の準決勝全体を通して見えた感想をひと言で言えば、そこに誤魔化しは一切利かないということだ。どこかで見たことがあるようなネタや、他者の良いところを寄せ集めたようなネタでは、まず通らない。加えて、急いで作った感のある仕上がりの低いものや、無理矢理感のあるネタなども同様。その辺りがキチンと見られているなというのが、選出された9組の顔ぶれからもよくわかる。

 今回のファイナリストの中では唯一ダイヤモンドだけはやや落ちるような気もするが、その他の顔ぶれは文句なし。こちらの希望通りというか、どのコンビも選ばれるべくして選ばれたという感じだ。納得度の高い、優れた審査だったと言えるだろう。

 こう言ってはなんだが、今回のファイナリストは昨年以上に地味な面子だ。華という意味では女性コンビで13年ぶりに決勝進出を果たしたヨネダ2000がいるが、そんな彼女たちとて、まだ売れっ子というわけでは全くない。その他のコンビも似たようなものだ。誰もが知るような突出した人気者は一組もいない。悪く言えば、“どんぐりの背比べ”だが、よく言えば粒ぞろい。スターはいないが、期待値が低そうなコンビもいない。優勝コンビの予想は今回も難しい。この顔ぶれを見ると思わずそう言いたくなる。

 優勝コンビが思い浮かばない。それはなぜかと言えば、繰り返すが、全組が“やりそう”に見えるからだ。下位候補が見当たらないので、上位の予想もしづらいのだ。笑神籤による出番順、そして、いまだ発表がない審査員の顔ぶれによるところが大きい。僕はそう思う。

 地味ではあるが、堅い。外れが見当たらない顔ぶれが揃った、今回の決勝の期待も相当高い。ハイレベルな好勝負必至。現時点における筆者の優勝予想をあえて言えばキュウとなるが、正直誰が優勝しても面白い大会になると見て間違いない。新しい(?)審査員の顔ぶれを含め、決勝戦までヒリヒリとした緊張感が漂い続ける。M-1グランプリ2022は俄然、盛り上がってきた。

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