ラヴィット!出演者を独自の視点で寸評してみた(1) 〜月曜レギュラー編〜

 前回この欄で述べた「ラヴィット!」(TBS)についての話をもう少し続けてみたい。

 番組開始当初は決してそれほど注目度が高くなかったラヴィットだが、例の水曜日のダウンタウンによるドッキリ企画が放送されて以降、自分たちのスタイルに自信を得ると同時にその評価はジワジワと上昇。番組スタートから2年目に入った頃には、これまでの朝の情報番組では存在しなかった独自のポジジョンを確立することに見事成功した。そして番組成功を確信させた決定的な出来事と言えるのが、昨年末に行われた「ゴールデンラヴィット!」の放送だ。

 全曜日のレギュラー+一部のコーナー出演者(準レギュラー)総勢50名が集結した、かつての「笑っていいとも!特大号」(フジテレビ)を彷彿とさせる年末に相応しい豪華なスペシャル番組。実際は「笑っていいとも!特大号」と「オールスター感謝祭」(TBS)を足して2で割ったようなスタイルだったが、あれを見せられるともはや文句はつけられない。まさに番組の格を大きく引き上げた放送だったと言えるだろう。さらには今年8月にも再びゴールデンタイムでの特番の放送が予定されている。これまで番組内で2回行われた『耳心地いい-1グランプリ』というコーナーが、夜のゴールデンタイムに単独企画として採用された。どのような放送になるのかは見てのお楽しみだが、これもまたラヴィットの勢いを感じさせる出来事に他ならない。

 放送開始から現時点では2年と3ヶ月が経過した。ロケVTRやスタジオに頻繁に出演する、俗に言う準レギュラー的なポジションの顔ぶれは番組開始当初と比べるとそれなりに変わっているが、毎週の出演が決まっているレギュラー陣は開始当初からほぼ不変だ。こうした帯番組において2年以上もの間レギュラーの顔ぶれが変わらないことは極めて珍しい。かつてのいいともや現在のヒルナンデスなどと比べると思わずそう言いたくなる。

 番組開始前に選んだレギュラーの顔ぶれに、ここまでは全く手を加えてこなかった。それは言い換えると、スタッフがその働きぶりを高く評価していることとイコールだ。繰り返すが、こうした番組の場合、多かれ少なかれメンバーの入れ替わりが行われるのがお決まりだ。活躍度がイマイチだったり、あるいは諸々の事情があったりして、2年も経てば大抵少しは変わる。それだけに現在のラヴィットは貴重な番組に見えてくる。とりわけレギュラー陣への信頼は厚そうだ。さらには頻繁に呼ばれる準レギュラーも同様。安定した活躍が期待できる実力者を重宝している様子が、その顔ぶれから手に取るように伝わってくる。

 だが、それでも番組を長く続けようと思えば、レギュラーは循環せざるを得ない運命にある。全曜日合わせて現在30人以上いるレギュラーだが、同じメンバーのままこの先何年もやっていくことは実際は不可能だ。人によって活躍度も違えば、主な活動内容も異なる。外せない人は確かにいるが、入れ替わりがあってもおかしくない人がいることもまた事実だ。

 そんないまの出演者の顔ぶれが変わる前に、現在のレギュラー陣、及び準レギュラー的な人たちの番組における活躍度などを、独自の視点でそれぞれ記してみたい。

 まず今回は月曜日レギュラー編。

○    名前 (所属事務所)

・ロバート 馬場裕之 (吉本興業)

 キングオブコント2011王者。いまや誰もが知るお笑いトリオ・ロバートの1人でもある馬場だが、率直に言って、このラヴィットのレギュラーにはいわゆる「芸人」として選ばれたという感じでは全くない。芸人ではあるが、現在の彼が発するムードはなんというか、文化人的だ。お笑いよりも料理や掃除などを好む芸人。こうした情報番組にはうってつけの存在と言えばそれまでだが、この番組とうまくハマっているかと言えば、少し微妙なところだ。もちろん特技である料理の知識やその技量を披露する場面はそれなりにはあるが、決してそれほど多いというわけではない。普通の情報番組ではそれで十分なのだが、なんと言ってもこの番組はお笑い色が強いでお馴染みのラヴィットだ。持ち前の特技が活かされる場面より、あまり得意ではなさそうな「お笑い」を求められる場面の方が確実に多い。もちろん芸人なので馬場もそれなりにボケることもあるが、現在の立ち位置はどちらかと言えば少し中途半端なものに見えてしまう。食通のためMC川島の共感相手になることも多いが、番組での存在感は少し希薄気味だ。とはいえ、馬場の存在が(一応?)情報番組としての体裁を保つには必要であることもまたしかり。芸人個人としての活躍度は低くても、番組全体を引いた目で見れば、ある意味では効いていると言える。決して廃れることのない料理という得意分野を活かして得たこのレギュラーの座を、そう簡単には追われることはなさそうに見える。

・本並健治&丸山桂里奈夫妻 (両者ともホリプロ)

 元プロサッカー選手同士のカップル。とはいえ、番組開始当初の両者の間には知名度において少なからず差が存在していた。
 丸山さんは言わずと知れた元なでしこジャパンのFW。いまから12年前にW杯優勝を飾った日本代表、その栄光のメンバーの中のひとりだ。そんな日本が優勝を飾ったW杯でその最大の鬼門と言えたのが、それまで日本が1度も勝利したことがない地元ドイツとの準々決勝だった。0-0で迎えた延長後半3分、澤穂希さんの浮き球のパスを受け均衡を破る決勝ゴールを決めたのがこの丸山さんだ。ここで優勝候補ドイツを破ったことが日本女子サッカー史上初のW杯優勝、及び国民栄誉賞にまで繋がった。そして翌年のロンドン五輪銀メダルをはじめとする、現在に至るまでの日本女子サッカーを語る上では外せない歴史の一部として、彼女の名は刻まれている。決して大袈裟ではない。もしあそこで丸山さんがゴールを決めていなければ、現在のなでしこジャパンはない。そう言い切ることに勇気はいささかもいらないのだ。
 例のドイツ戦の一撃によってなでしこジャパンはもちろん、彼女の人生も一変した。日本をW杯優勝に導いた立役者としてその名を全国に轟かせることになった。引退後はタレントへと転身。バラエティ番組で活躍する姿が頻繁に目につくようになったが、そのタレント志向な感じは少なくともW杯で優勝した直後からある程度垣間見ることはできた。持ち前のルックスと明るさを活かしたタレント的な露出が選手時代から目についていたからだ。タレント活動が目立つ元サッカー選手はいつの時代も一定数存在するが、その多くは男性がほとんどで、女性はほんの僅かだ。元なでしこジャパン優勝メンバーの中では、ほぼ丸山さん一人に限られる。このタレントジャンル(元なでしこジャパン)は、いわば丸山さんの独壇場というわけだ。少々独特な彼女の言動も、いまやすっかりキャラとして受け入れられている。元選手として、そしてタレントとしても美味しい立ち位置にいるなかでの、このラヴィットレギュラー抜擢という感じだった。
 一方、彼女の夫である本並さんも元日本代表(GK)ではあるが、その代表キャップ数はわずかに3だ。代表としての知名度及び活躍度は丸山さんに及ばないが、Jリーグ草創期時代にはガンバ大阪やヴェルディ川崎の守護神として活躍した歴とした実績を持っている。MCの川島をはじめ、当時のJリーグを知る人には馴染みの深い存在だったわけだ。ラヴィットレギュラーへの抜擢は、彼の現役時代を知るJリーグ好きの川島の存在も少なからず関わっている。番組内での両者の絡みを見ているとそう思わずにはいられない。
 この夫妻の出会いなどはプライベートなことなので評論することは避けるが、なんというか、結婚したこと自体は、両者タレントとしてやっていくには結果的によかったのではないか。仮にもしお互い独身であれば、このラヴィットのレギュラーに選ばれることは両者ともあり得なかったはずだ。丸山さんはともかく、本並さんは現在のようなタレント活動ができていたとは考えにくい。ラヴィットのレギュラーでなければ、水曜日のダウンタウンやネプリーグに出演することなどはできなかったと考える。
 丸山さんはタレントに転身した当初からすでに現在のキャラをある程度確立していたが、本並さんも時間が経つにつれそのキャラを確立しつつある。ざっくりと言えば、妻の丸山さんと同じタイプ。少々おかしなことを言っても許されるキャラだ。川島のように本並さんに対して的確なツッコミを入れてくれる人がいれば、少なくとも絡みとしては成立する。丸山さんが産休中だった約5ヶ月間はひとりでの出演が続いたが、今思えばよく持ち堪えたなという印象だ。もしタレントとしての武器や特徴がない人であれば、そのまま降板していたかもしれない。
 意外とよくやっている。ラヴィットレギュラーとしての本並・丸山夫妻への筆者の評価はこうなる。タレントとしての経験は少ないながらも、存在感はそれなりに際立っている。とはいえこの先も長くレギュラーを務めそうかと言えば、簡単に頷くことはできない。ここまでは持ち前のキャラでどうにかやってきたが、タレントとしての技術や力量に関してはまだまだだ。いまはどうにか周りに活かしてもらっている状態。悪く言えばそうなる。さらに本並さんはレギュラー陣の中ではダントツ最年長の58歳(まもなく59歳)だ。それに生まれたばかりの子もいる。色々な事情を踏まえても、そう長く出演を続けることは難しいのではないか。
 ポイントとなるのは来年の3月だ。そこでちょうど丸3年。それまでレギュラーを務めることができれば大合格。その後も出続ければあっぱれ。両者に拍手を送るつもりである。

・ぼる塾 きりやはるか あんり 田辺智加 (吉本興業)

 筆者がぼる塾を初めてテレビで観たのは2020年3月19日、アメトーークの『NEXTお笑い第七世代』という放送回だった。2回目はそれから約1ヶ月半後の2020年5月4日、しゃべくり007の『第七世代女芸人軍団』という回になる。世の中がコロナ禍に入る直前くらいの時期、俗に言うネクストブレイク芸人として取り上げられ、うまくそのチャンスを掴んだ。ラヴィットのレギュラーに抜擢されたのは、筆者が彼女たちの存在を初めて知ってからおよそ1年後。他のレギュラーの何組かにも同じことが言えるのだが、もしラヴィットがもう少し早く(例えば実際より1年前とかに)始まっていれば、ぼる塾がレギュラーに選ばれることはなかった。レギュラー陣はいまとは全く異なる顔ぶれになっていたはずだ。芸人がブレイクするにはタイミングが重要だとはよく言われるが、ぼる塾を見ているとそれがよくわかる。まさにタイミングよく売れたトリオと言えるだろう。
 メンバー個々の話をすれば、立ち位置中央のあんりはともかく、きりやはるかと田辺さんはどちらかと言えば少しトンチンカンというか、いわゆるおバカ系だ。自らの話術できちんとした笑いを取るタイプではない。そこで効いてくるのがあんりのツッコミになるわけだが、それよりもさらに効いているのがMCの川島によるツッコミだ。このぼる塾と川島との相性は抜群にいい。ロケVTRも含め、ぼる塾はラヴィットにとてもうまくハマっている。ヒルナンデスなどでは多分ここまで持ち味を発揮することはできなかったのではないかと、ラヴィットでの活躍を見ながら勝手な想像をしている自分がいる。
 お笑い枠、女性枠、そしてスイーツ好きの田辺さんによる情報枠という、ほぼ全ての役を兼ね備えた貴重な女性3人組。トリオとして今後どこまで活動するのかはわからないが、いまの調子ならばレギュラーの座は当面安泰だろう。フリートークでは川島に活かされている感があるが、独自のペースで行うロケVTRの内容は、番組のらしさが詰まった脱力感のあるユーモア溢れるものに仕上がっている。彼女たちをレギュラーに抜擢した決断は正しかった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?