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短歌

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短歌
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#短歌

皮膚よりも秘密そのものが感じ合うロード・ハイバンド・ピンクの調べ

かげおくりひとひとりぶんのおおきさはにげてはならぬことばかりなり

隣人とまた隣人と遊び来て義眼の涙眼路の限りに

割れた声夏昼下がりの心象はVHS青の光彩

老衰の夜空と自死の青空は精神科医の痙攣である

唇と舌の位相がすり替わる桃と林檎の青に妖しく

古傷は太古に端を発したり未来へ向けば幾らも裂ける

関数に愛を入れては暴力を吐き出す体雨クリスタル

実時間それを時間と呼ぶために懐開く生のかがやき

踏まれてる者が見えぬか張りぼてじゃ獣の歌が今放たれる

俺の名は権利の前に生を受け「誰?」「何?」「あれ?」の闇も届かぬ

手癖から産み落とされて地に触れた50セントを誰も知らない

生活の隙間にシーツ落としたり検索履歴白の大穴

胸を掻き愛する人も嘘にする文語の熊手雨の実の中