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短歌

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2023年9月の記事一覧

氷河の輝「嗚呼鱗粉の誘いは夢だったのか」手枕の跡

歓楽に過ぎた若さとありきたりすべては終わりあとに夕刻

繰り返す名字と名前はぐらかしゆらぎ重なり人は別れる

年を経て逆方向に生きてゆく未来などより永遠だろう

善人が蟹の泡で酒を飲む裁縫の手にまた傷一つ

膝の上煙一筋見上げれば何故か誰かの日記と思う

何処となく尽きた先にて待っている名の枯れた海煤晴れの夏

死にきれば指の先までくれてやる屁理屈で解く敬語のわたし

眠らずにいても明日は朝になる過ぎた夜更けの先が尖った

朝霜が恋しくもあるか渡月橋踏める影なし郷の水面よ

靴の音浮世の町に雨薫る暦のとおり終わらないもの