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短歌

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2023年7月の記事一覧

数えても減るべくもなし焼ける日に肌の膨らむ夏ぞ熟れゆく

王冠の冷えた約束あくまでも汗をそのまま氷の世界

内の空外の宙へと眠るのみ手提袋の香り恨めし

朝顔の染みを頭で作り出し陽の笑み頼り露と消え行く

生という不時着の夏黒曜で埋もれたような応えない海

人心声の世界の探り方さざめきの度時の正夢

切れ端が夢を誘うて柳影揺蕩うものに浮き上がる銀

残骸を激しく歌う今宵こそ安い激しさ真夏の神話

「青々」と木々の緑を言い張って手持ち花火も切れた夜です

せかせかと使う時間のいじらしさ減るも無惨な時計の電池

首筋に一人の鬼が夢の跡つれない朝は靄の邪

今を書く起き覚めの文字足跡は最初の罪か最後の罪か

何一つ持たない影を引き摺って無縁の命この地のほかに

壊される運命の未花雪印踊れる君と溶けだす恋と