マガジンのカバー画像

短歌

804
短歌
運営しているクリエイター

2023年6月の記事一覧

愛として昨日を生きてからの今日眠らずいては明日は泡沫

香りすら半分欠けた温もりを手繰り寄せては起き覚めの夏

憧れに忍ぶ姿も変わりはて「月は沈んで星影もなし」

息づかい図れぬ若さ盲目で水風呂でしか冷めきれぬ熱

線形に声も想いも過ぎぬれば六の道など妖の夢

笹の波閉じ込められた赤い家名前のない絵名付けられた葉

ただ一つ海への道をひとすじに通りは青い鳥に変わった

粉々に割れた心の川流れ欠けたる月よ美味の涙よ

紙の上生き抜くために閉じ込めた「もう会えないね それじゃあまたね」

色もなくこの世の終わり待ちかねて童のように空へのぬり絵

すまし顔朝を知ろうと小刻みに影は「森」とも「震」とも言った

秘めごとは二人の狭間笑いあう真夏の中に架けられるもの

かさぶたは夏の幻天の川拐われるまで波打ち際で

気付いたら死に急ぎする満潮のあれは彼方の水玉の星