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短歌

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短歌
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2022年12月の記事一覧

躓けば路肩の露もお仕舞いでそこに留まる心がひとつ

砂は傷渇ききるのを待ちわびて見えなくなってはじめて二人

先人のジャズはかなしやもう少しもう少しだけ体やさしく

ささくれをちらつかせ冬新しき地獄の浜に波聞きながら

未花摘む早世脱け殻の繰り返し終に地蔵の吐息吹くまで

あまりにもたゆまぬ笛の調べにて木葉隠れに漕ぎ出してゆく

会えないとそれが常だと日は募り悲しいという顔を忘れた

幾度も消した黒鉛染むばかりごつごつとした日本晴れかな

迷い子の傾きたりし百年の蝶々結び花の見る夢

恋よりも愛の密度を求めたら壊れるだろう君ってやつは

音もなく朝雨が降る「約束ね?」きっと死ぬまで女神夢見て

「予がすべて」ちひさき春のはじめにもせせらぐものの満たしはじめる

唄詠みの哀れ遥けき遺書の声正多面体何処までも玻璃

恍惚の歌の継ぎ目を張り替える話の外の小さき人よ