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短歌

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2022年11月の記事一覧

秋の田は人が造りし人拒む黄金色のさよならである

燻るも焦がすも同じ身のひとつ恋の影踏む命なりけり

二ひらの合せは蝶の花休め露のいくつも好きにせしめて

霜がため失う色と苔がため失われゆく記憶の彩と

旅の星時に栞を待つ者ぞ想い出行きを淡く閉ざして

神の声聞かずに走る深夜二時動悸の意味をただその胸に

空き箱の我が身に背く夜をさえ零に等しく導けるなら

たむろして室の畳にキスをする街が街なら恋くまなくも

「また、いづれ」同時に五つ走りおり生のあなたを忘れつつある

箱庭に悲鳴は尚も泡と消ゆ「そろそろかしらあの人の子は」

陽だまりの陰に街ごと立止まるとまるもゆくも限りと知って

ジグソーを当て感でする夢だけが世界を包む深夜のニュース

私家集は例外もなく寒空であなたのいないあなたの景色

寒さには終の厳しさ心には春麗らかな軍艦である