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短歌

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短歌
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2022年10月の記事一覧

好きだとか嫌いだとかの不可能がおおよそ同じ重さを持って

泣かないと決めてハンカチを持たずに着られた服の袖濡らすやら

去る君に見せる夜明けの驕りかも明けの明星の遥か向こうへ

行々は嵐のあとに立ち残る恋に手だてのあらましことを

霧の尾に君の待つ原心せし晴れはなくとも仰ぎみるかも

階段の最後のひとつ踏み外すあなたを過ぎたそれがさみしい

教科書に人生転ぶ詩一片刻むはいつも読み手なりけり

わたつ海の秋を知らざるその青の還りけらしな遠い砂浜

時留めの遥かな人をそのままに性の悪魔が詩を離さない

目をつぶり奏の声と生の時そこから還る我の静けさ

恋に落ち恋と終え行く少年よ吐息にずっと揺られるも愛

誰そ彼に花の命を問う手間を舞う花弁で払うつもりで

欲の華逢魔が時の繰り返し人焼き人よ夜に罪は濃く

残り香も早や夏霞沈み行く陽の懐へ終の静かへ