マガジンのカバー画像

短歌

812
短歌
運営しているクリエイター

2022年9月の記事一覧

大人等の幾多の嘘は沈黙で返す子供も沈黙である

生の傷死に行く者の正装と銘柄知らず煙草一箱

男には墨染の機脱げもせず橋上の人後を追うのみ

あくる日の涼しい空に風を知る網戸の目より夢を重ねて

御仕舞いは土砂降りの色をしていない小雨をじっと誰かが見てる

「眠いから泣きたくなる」と赤ん坊は臍の切なさ胸まで浸かり

坂はまた一段ゆるく滑りつつ「終わり行くのは俺の方だ」と

あはれたえさだめもさだむゆくへにはけふあやまちのあめもふるらし

幾多夜が過ぎてか人にむづかしき約束二つ明星になる

残された大人のかけら少年よ立ちつくすべき夜明けのままに

晴れるかもしれない九月夢違え初恋さえも苦しさもない