マガジンのカバー画像

短歌

812
短歌
運営しているクリエイター

2022年8月の記事一覧

忘らるる時に真にかくるもの人にあらざり神であれかし

都会から岬巡りて悲しみは本当にそこに帰るべきかと

そこにありそこにあらざる性癖に「服」という名を被せかけつつ

雨土は古都の調べを浮かばせる人の恨みはなおも沈めて

契りしもあはでなつかし蝉時雨違ふさだめのままよ恋しき

降りしきる小滝のおとにしほたれてかぐはし夏も休み休みに

水芭蕉部屋の中ではエアコンでたった1℃の上げ下げをする

向日葵の一波越えてまだ熱く涙の種が無為にさざめく

潮騒へ月夜ほつれて肌白しまみえぬ影よ影抱きしめて

果肉断つ血染めの日記吐き落ちて都会は一人一人のために

マスク越しラクトアイスの声色に首を傾げて愛でて八月

なつうたはとほいみらいになみおとをあわかときこゆそのひとにしぬ

三十路にもなりて我が身の九つの少女の涙わからずにいる

イマドキのイナカモノゆえ血の問いが消し炭を産み落とし続けて