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短歌

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2022年7月の記事一覧

蒸しきった気流列島の蓋が開き木菟の目が次の夜定む

サイダーを廻り廻った少年の夢だけで見る姫万華鏡

微かなる報いの後の黒炎で言の葉を焼く無明の前夜

雨粒の核は絵画に占められたさて美しき近視の世界

浅い夢数えきれない意識の眼去り行く人と苦を友とする

いにしへの歌にまかせて紫の雨ふるさとへわれはかえらむ

花息を痛みの先に立たせつつ香り隠れて鈴は鳴りやむ

過ちを過去とは言えず天川添うて歩いて敗けて笑って

哀メガネ視界のはしを切らしてる「アイラブユウ」のカナがたりない

明日ごと食散らかして気をすます川獺の眼を忘れられるか

夜明けとはいいものだよね希望とか名の付けられた何かよりもさ

君がままそのままで見ゆ夏の雪瞳が虹に等しいなんて

長き世に身のうつくしはかたきかな水のいろなど千代にわからぬ

満潮は満ちきるまでは帰らない引潮もまた偏に同じ