マガジンのカバー画像

短歌

804
短歌
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

大輪の薔薇さえ唇を渇かせるこんなものらが愛だろうかと

いつの日か「かもしれない」の時を越え君そのものを超えて行くのさ

髪振られ友も愛をも染め上げるかたへの鏡水の鏡よ

調和なき予定は枯葉の舞であるさりとてそれを風はたよりに

狭まりし世界を妙と読み合いて残るひとつが互の縁

宵陰に文語端から振りかざし肥大せらるる汝よ滅すべし

全景は赤光のほか応えなく袂に縋る顔も見えない

街はもう哭きかけようとしてるのに別れられない風に吹かれて

フェーダーのひとつの前に木霊する若者達よ内なる耳よ

「五枚札」捨てうるものも分からない「理性の孕み」忌みをなくして

一目見て一つ滑ったあの日からなくなったものだけを見ていた

指合わせ忌む朝焼けと左の手黄昏時とするり右の手

初夏の香は幾夜残るやと遊びの花火六月燃やす

あの時はあの時として痛恨で迂闊だったと筆だけ残る