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短歌

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2022年5月の記事一覧

「インテリア」その車内には家にない男の影が青みがかりて

風はただ渇かしていくなだらかに朽ちるがままに涙ひとすじ

雨染みやインクの滲みなかりせば言葉は我をもたずにすむも

浅い息時を読みなす揺さぶりと鳥の刺繍が夢の境界

人の声だけが湿りを伴にする麗し人よ雨はあがった

筆々と逃げおおせたる夜の信馬小屋は網膜の裏にて

青霞み意識はすべて水の中絵が描けないと色はかなしい

振る舞いに蛆虫が這いよったとき爪の割れ目にふと気がつのる

雑踏は浅い夢見る人を踏む銃口とは何なのかも知らぬ

五月晴れ菜の花色の旅支度水辺の蛇に翠の瞳

夜泣きから何が違った「駆け抜けた時間を想うの」またそうやって

踏切の人ほど褪せぬ朽ち月を軽きに降りて君にふりだし

大いなる力はハンカチを落として行方知らずの虹渡される

読まれない為に生まれたはずならば言葉足らずも連れて行こうよ