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短歌

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2022年4月の記事一覧

終わらない生身の時間曖昧なブルーの瞳そして神

訳もなく誰もが海に帰るのに誰もがいない訳もないから

紫の知らせを待って残りの日ペンをとらせて何があろうか

春めかし女性専用車両にて新聞開くおじさん並ぶ

手巾が白粉拭う僕の街背伸び恥ずかし波音の妙

畳まれたまま濡れそぼつ傘の皹あの向日葵がやけに枯れない

「Over Drive」の少女が生きたのは「サマーヌード」の青年の浜

落ちきった色は戻り始めつつある私の後の誰か共達

瞬きを必要とした君が死にラジオはすべて風の中である

あれほどに安く笑って過ぎたのに淡い夜ほど見境がない

慄然とブレスもあらぬ日本語は白い絵の具の殺意なりけり

楽園が崖に縁取りあるならば絶壁の血よ聖比べして

この世をば対に置き去る少女なら21グラムびた一負けぬ

狭い方狭い方へと躓いた男の自殺は潜水である