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短歌

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短歌
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2022年3月の記事一覧

微睡みに生きる街角光あれ格好つけて去るがごとくに

風光るデスクの滲みも狂おしくまだ見ぬ友の過去のお話

そして今仮面の美貌過ぎ去れり冬沈み行き訳知れなくも

ひらがなの「やさしい」という文字列に只「嘗めるな」と返る文字列

梅ガムの香り首筋たゆまなく心を砕く明け方の乱

「海を見に行きたい」「誰と?」「それをどう聞かせようかと思った人と」

君がため朝は冷めさせ我儘も御身のためと伏すに及ばず

お話の田舎の街の主人公その両親の仕事は何ぞ

花の名を告げて去りゆく人がいて頬疼くから黙ってしまう

死ぬ前に浮かぶ夜景が「明和地所」駆け抜けました終わりの先に

火を見つめ木をぼかしつつ無限湧くかのボーカルの胸の泣き声

「死にたさ」はいのちの前に植えられる高回転の笑い声たち

また明日また明日とは唱えつつ布団の中の後ろ姿よ

推すことの好きと言われぬ照れ隠し一足飛びに愛を信じて