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短歌

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2022年1月の記事一覧

初夢や憎い眼も風の跡粗野な標よ倒れたまうな

青ざめて左様ならばと河の果て骨は釣れるか月なき空に

ひとのてがうみだすものはすべからくはかることなくさりげなくあれ

諦めて諦めて尚負け降りる我の葉擦れと園に降る雪

沙汰の闇縁を切っては喰らいゆく背広の群れと亡者八景

鮮やかな嘘が褪せ果て人が死ぬ曖昧な世を彷徨う者よ

冬伏せて夏光立つ姫蛍秋穂に垂れてこれでおしまい

「寅さん」の桜の手折れ売り尽くす渥美清の梅の傷跡

白雲の薄くたなびく淡い暮れ春待顔に紅は忘れて

ベランダの風落ち着かぬこの慈悲よ圧巻去ってくもりさわやか

11時「ギムレットには早すぎる」「狡い嘘なら聞きたくないの」

壁隣煤名残りたる訳知らず冬の子どもはしとしと歩む

地下鉄でくしゃみキャンセルひとりとせ鼻白まれるキスふたりとせ

車道には鮮やかすぎる紅花と誰が呼んだかどぶろく迷子