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短歌

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短歌
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2021年12月の記事一覧

幻よ事の始めに筆をとり事切れるまで居るはずもなし

須く肌は悪夢に剥がされる過去から染みを抜いたところで

暖房に生乾きもの焼き焦がれ「鋭利な蔦だ」彫刻振るう

斜掛けの現場仕事に猫目石心燻らす黒子の運命

唇の過ち静と振りほどき影ひとつから行き交う二人

黴夜中拭いもきれぬ湿度の手別け隔てなく汗は流るる

欠損がぼうっと不幸で埋められる挨拶がまた異な墓のよう

吊橋よ情に一つもない振歩恋に落ちたり魂落としたり

詩に応え内燃機関叫びおり唇に戻りて文は綯われる

足跡を落とす獣の吠え微か白の嵐だオリオンが来た

若者の見栄を讃えて安く売るうなじの紅に窓が鳴いてる

触れもせず背中合わせの夜光虫闇に蠢く飛べない羽虫

PCの止まぬ異音がまた悲し繰る人生の無しと思えば

拍子木の足音近し深川の明るくもない灯りの中で