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短歌

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2021年11月の記事一覧

冬枯れに塵芥共美しく室の造花と水音ひたり

悪党が舞台を去った幕間に餓鬼のひそひそ声が残った

光なき街を抱きて羽を畳み接吻知らず闇底は、星

毬の描く放物線は人知れず七色渡す秋の夕暮れ

若者と臙脂交わして秋茜細まるままの時のゆずり葉

銀時計古りつもる冬浦霞白層々と記憶のはなし

寝る前の御伽噺と帰り道リフレインする無限階段

後背に同じ少女の住んでいた夫婦茶碗を啜る残響

相容れぬ氷の夢と純潔の雪の薄着が千切れ別るる

青雲とロングショットの雨粒が血飛沫と同位体の近視

気紛れに溜息奪う業物の刃渡りもなし家系図もなし

吹き曝しコンクリートに足と唾洗いざらいにあまつ村雨

冬だとは言い訳かしら午の陽の川面に風がまだ光りつつ

本気という気持ち悪さのその先に初夏の午後童の謡い