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短歌

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2021年10月の記事一覧

閉じた水潔癖の海憎からず一滴の静寂に振り向く

「人間がさほど偉いか」醜さの徒一輪も欠けることなし

黄緑の痣抜けきらぬ大井町季節はやがて表裏の乖離

月光夢アイシャドウごとその夜を選んだ君はスローに満ちて

耳痛む冬は隙間に吹きつれば雪見障子に人の暮れゆく

あたま池有り様を掃く竹箒惑わぬ前に妖になる

空紅く牙は見えねど一杯の出るも入るも君なればこそ

煙を巻くカルマン渦の秋影は朽木造の十二色相

人の世に欲有る限り振り返りまた振り返り涯てには源氏

始まりの落葉見届け寒雀身を染め上げて綿の足音