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短歌

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2021年8月の記事一覧

かの人は言葉に時制持たぬまま賢くあらず篤くあれかし

ただ遠く遠くで終わることを知るいつまでそこにそこにいたって

少年は川と境がなくなった絵日記は只一人の為に

指サックなしで書類はめくられる若くはあらず湿りくる夏

いとけない七月過ぎて帰花朧々と陽炎連れて

横になり鳥居の話す風開くソロのワルツに森はやさしい

通り雨傘を持たせてくれたから過去のむこうであなたに会える

内よりの汗は歴史を積み降ろす忘れた花の一枝もない

大熊が生き方よりも面白くなりたいとして精霊食べる

気が狂うほどに「蛙」と書きなぐり故郷の夜半音壁が立つ

思慕涼み枕を翻然帰途探し望みもしない風を伝って

喀血の黄色は正気の沙汰でない盆から先に泣かせましませ

慣れるなよ職務と名乗る亡霊に生きるふりして死んだふりして

笹は降る液晶からは人時雨鶴が鳴くとてらくだや行かむ