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短歌

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2021年7月の記事一覧

植物の栄華は荒れた緋色の芽逆島は冬のとばぐちである

寺山を国語教師が便覧に読み下すとき青鷺降ちぬ

雨の降る数字は雨が消してゆく真上はつねに烏のはかり

そこにだけ愚かがあって時がない夏よ光を終いたまうな

眠っていた私のベッドの気もするが十五の夜に見たかったもの

「要するにどういうこと」と問われ問う慣れたものだね愛もないのに

足跡は止みそうもない唄のなか老いて人からあきらめられる

君はまた我が身の少女と旅に出るそういう風に書き出したから

ほの暗い水底に銀の杯を立てバーリトゥードの聖がはじまる

ヒーローに取り囲まれた薄弱が時代の限り病を吸って

降水を掬おうとしたスティールとスウェットの間わずか三秒

鋼鉄の処女よ緑の日々は凪ぐ長いながあい影のことです

鳴神の書を綴じおさめ常世闇慕情の句碑が病む一里塚

「雲隠」ただ光のみ人間の手はそのようにできてはいない