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短歌

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2021年6月の記事一覧

金曜の夜は仕事の背景に私情が歌う淡いものです

木霊する古民家屋の呻きから骸を剥がす偽の海風

電波塔危める光月の石ドラッグストア「惚れていました」

「ここにいてどこへもゆける」そう言って裸を纏う彼方が消える

看板に指をさしうるものはなくコインパークのこけのむすまで

真夏日にコップに光る汗だけが人を逃るる友の一輪

年老いた調味料群喰うために葱と忍辱だけの舌粒

あしからず梅雨の雷だとしたらやけに素直な気がしたもので

古色めくリフに幼い薄化粧「あのベルベットは炎だったの」

どの場所に立てど油断は美しい華やいだ空呼ぼうなんてね

ドアがある漏れる歌声当てようと開かないドアの話をしてる

アルコール纏う人共落涙の見分けがつかぬ「在りし日の人」

どっぷりと宵に兎が飛び込んであの裂かれ目が刷毛のようです

ぼくたちが「世界」と口にしたときに君は何限に眠るだろうか