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短歌

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2020年12月の記事一覧

「郭公」が時雨て淡く古校舎端の水辺の伸びゆくままに

幾つかの故郷があった気がすると今が手招く鬼が挫ける

青葉から生まれた蒼い花恨む藤の架け橋故意に落ちたら

夢のあと含み零れる口紅を唯見ないふりしとしとと藍

箒星惨めいて降るあまつさえひとりとひとりなれずにひとり

曠日の灯りは易く測られるつまづくように明けてまた夜

許可証を握り潰して高速へグラデーションのないところまで

彼は部屋の中冷たく吹きすさぶ風は殺める彼の中から

目の前の文化は常に黄昏て光の中に仮面を記す

寒しさを記憶の庭に植え立てて雪のうなじを細りと発つ

年をかけ体を焼いた洞穴に夕暮れはたり欠けぬ面影

一ふりの海を求めて芳しく透明な人永遠の朝

色染まり色落とされて風彼方あなた紅葉の涯てを知らない

夕立で夢を見ただけ影背中「ね、」昨日とは歩けないのに