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短歌

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2020年11月の記事一覧

白日に気掛り靡く薄化粧上がらぬ気温憂慮の文目

帰れない煙どうしに見えたのに「やだ」青い、青い影の片隅

乾ききる冷たい頬と街自棄がコンクリートの谷に散るらん

舂いた住宅街の灯りから逃れ仰せど泣音忍ばず

薄い白色づく嘘が増えてくる午前六時と置き去りの街

ナトリウムランプに人気失せ果てて寒空の入りトンネル燃える

薬指節々ばかり疼くから灯りを厭う膨らむ布団

細水跡を追っては北風が鼻啜らせる赤は何色

新しい風は生まれた日によらず陽のさすとこで本を開いて

埃立つ地平の縁に埋もれ陽と白い鴎と六時限目と

18℃戸惑うようにできている郷愁なぞの輝度の向くまま

スマホさえ光源になる暮れ時に人数割りの四角い灯り

照らさない飾りの灯り拒む色哀しみ降りる地下へ靴音

覚束ぬ雲の隙から帰り来て目に入りくすむ人影斑