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「働きアリの法則」から学ぶ組織運営

人間社会の組織運営について、意外な場所から学ぶことがあります。北海道大学の長谷川英祐准教授のグループが発表した「働きアリの法則」は、人間の組織にも適用できる興味深い洞察を提供しています。

この研究によると、アリの社会でも約2割のアリがほとんど働かないという事実が明らかになりました。さらに興味深いのは、「働くアリ」だけ、または「働かないアリ」だけのコロニーを作っても、それぞれの中で同じ比率の「働くアリ」と「働かないアリ」が現れることです。この現象は、人間社会でよく知られる「パレートの法則」(80:20の法則)と類似しています。

この「働きアリの法則」から導き出せる重要な教訓は、「どんな組織であっても『怠け者』はいる」ということです。一見、理想的な組織を目指すには逆行するように思えるかもしれませんが、この認識は実は健全な組織運営につながります。

ライフネット生命の創業者である出口治明氏は、ある経験から「人間が100%働くと思っていること自体が間違っている」という洞察を得ました。多くの人は実際には2~3割程度の力しか発揮していないのが現実だというのです。

この認識に立つと、組織のリーダーの役割も変わってきます。「100%の力を発揮してほしい」と求めるのではなく、例えば30%の力を33%に引き上げることを目指すのが現実的なアプローチとなります。毎年少しずつこの割合を上げていく努力が、長期的には大きな成果につながるのです。

さらに、社会人類学者のジェームズ・フレイザーの言葉「世界は偉人たちの水準で生きることはできない」も、この考え方を裏付けています。人間社会の現実を冷静に見つめ、過度な期待を抱かないことが、むしろ健全な組織運営につながるのです。

この視点は、職場だけでなく、趣味のサークルやボランティア活動など、あらゆる集団活動に適用できます。「2割の人はサボる」ことを前提に、鷹揚に構えることで、むしろ組織全体がスムーズに機能する可能性があります。

結論として、「働きアリの法則」から学べることは、人間の組織における現実主義の重要性です。100%の完璧さを求めるのではなく、小さな改善を積み重ねていく姿勢が、長期的には大きな成果につながります。リーダーは「人間はその程度のものだ」という認識を持ちつつ、少しずつ全体の生産性を高める努力を続けることが、健全で持続可能な組織運営の鍵となるのです。

参考: 人生の教養が身につく名言集 (単行本) | 出口 治明 |本 | 通販 | Amazon


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