それが「見えている」というならそうかもしれんが。

市販の目薬もきがつけば指すようにしていたし、友達にもらった目元が暖かくなる不思議なものを使ってみたりもしたけれど、2.0だった頃と比較するともうさっぱり「見えない」。

特に夕方とか夜。いい加減これはなにかおかしいのじゃないか、と思って眼科に行った。壁にはレーシックと、あと、噂には聞いていた「角膜の内側に多焦点レンズを入れる手術」の案内が貼ってあった。どうしよう。黒目に注射とかされるんだろうか。保険適用外って話だけど。

いつものCを見て、どっちが開いてますか、みたいな質問に答えたり、目薬さされたり、プシュっと空気を当てられたり。
しばらくして、お医者さんに呼ばれた。今まで診てくれたのは看護師さんだったのか。わからないことだらけだ。そういえば、受付で、最近ちょっと目が見えにくくてー、みたいなふんわりした話をしたきりで、どこがどう、とかそういう話はあまり詳しくしていなかった。

「裸眼で1.2出てますね」
はい。いやでも。
「病気も多分ありません」
えー。ええと、あの、多焦て
「見えてます」
食い気味だった。

ドライアイ用の目薬をもらって帰りながら、もんにょりとした思いを感じ倒していた。少し乱視がありますねえ。と、言われても。

赤信号で足を止めている時、警察のバイクがすーっと走り抜けて行った。赤灯がひゅーっと線を引いて消えていく。近くに来るまで見えていなかった。

これじゃないか……?

学生の頃。オートバイや車に乗っていた……というか、もう歩いている時ですら自分の背後を確認するのにサイドミラーのある右斜め前に視線を走らせるくらい、エンジン付きの乗り物に乗り倒していた頃、一桁国道の直線なら、信号四つ先のトラックの前にいるパトカーを見つけていた。

高速で追い越し車線を走りながら、走行車線の車に乗っているのが男性か女性かみわけて、覆面パトカーの気配を伺っていた。
ナンバーを見て、他県ナンバーなら近づかず、運転の荒いエリアのナンバーならさっさとパスするなり距離を置いた。

そういう視力を使わなくなってしばらく経っていた。

欲しいのはCの空いてる場所がわかる目じゃなくて、周囲の様子をレーダーみたいに探って反応できる目だった。両眼でー、とか言ってる場合ではなくて、片目が落ちてるなら片目ずつ矯正し倒したうえで1.5とか欲しい。

できれば目から2cmくらいのところにもピントが合うといいんだけど……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?