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#36 動物のお医者さん(院生、獣医学院)のご意見

動物のお医者さんからご意見いただきました。
公衆衛生の研究機関でありながらウイルスを拡散するイベントを受け入れるなら大学の看板を降ろすべき。
各々の専門からこの件を議論しようというのが本活動の趣旨でした。
引き続き各々の知見に基づくご意見をお待ちしています。
ありがとうございました。

【動物のお医者さん、博士課程(特別研究員)、獣医学院】

マラソンと競歩の開催地が札幌市と決まり、北大構内がコースに含まれる案が現実になると知ったときから札幌での東京五輪開催に関し「反対」の立場でした。

ただ、私は他人様にうまく説明できるような気がしなかったし、こちらのアカウントで皆さんの意見を拝読しているだけ。ずっと、そんな感じでした。中途半端でしたね。

かなり前に、札幌でのマラソンと競歩開催反対署名の存在をネットで知ったときは直ぐに署名しました。本気で反対してますから気軽に署名しましたし、「こんな署名活動を立ち上げる方が存在するのか」と少し驚きました。あれは2019年の話ですか、2年ほどが経過したわけですね。

当然、当時から反対の立場を変えていません。変わったのは、私が反対する「理由」です。そのため、ここに書きこむことを決めました。もう、黙っていることは出来なくなりました。当初の反対理由は「大学が抱えて継続している実験に、どう考えても影響があるだろう」「とにかく迷惑」あとは、大通公園のビアガーデンでビールを飲みたいから。

オリンピックを完全無観客で行うのかすら未だ決まっていない状況ですから、これから私が書くことには私の推論や憶測が含まれます。その前に、うまく文章にまとまるのかどうか自信がありませんが。

世間そして世界が「パンデミック」という単語を日常的に使う日が来るなんて、私たちは考えたことがなかったはずです。「新型コロナウイルス」のニュースを見るようになるまで、この言葉を聞いたことがなかった方もいるでしょう。むしろ、多いのではとも思えます。その言葉を使う日が、来てしまった。そして、今その渦中で生きている。

完全無観客にして競技をするのか、まさか平常時のように何ごとも起こっていないかのように観客を入れた環境で競技をするのか。その決断も、未だ知らされていない。

まがりなりにも公衆衛生学を学ぶ者として、SARS-CoV-2(新型コロナウイルスの名前です)によりCOVID-19(皆さんがご存知のこちらは「病名」)で現実に信じられないほどの数の人間が命を落としていっている環境の下で大量の人間を集めて競技を行うということは「感染拡大を招く」と考えざるを得ません。たとえ選手たちや五輪関係者たちが、既にワクチンを接種済みだとしてもです。

まして、既に変異株が猛威を奮いつつあります。今そして今後の変異株に対して、私たち一般市民がいつ打ってもらえるかも分からない現行のワクチンは無力と言っても過言ではありません。

仮に、この夏のマラソンや競歩のレースが「スーパースプレッダー」を生んでしまった場合。一般的にメディアは「札幌で発生」と報道することでしょう。正確に感染経路を追跡し、その起点が厳密には北海道大学構内ではないとしても「札幌」と報道されるのではと推測します。

しかし、その競技コースに北海道大学が含まれていたという事実を変えることはできません。その事実を変えられない以上、北海道大学は「スーパースプレッダー」を生む「手助け」をした大学であると見做されることになる可能性があります。「パンデミックでスーパースプレッダーをわざわざ生むような真似をするなんて、あり得ない」と考える私たちのような学生たちや教員たちがいようが「人命を脅かす事態に加担した大学」と北海道大学は見做される。個人的には国内でよりも海外のアカデミアでのほうで、ウイルスの件で有名になってしまうだろうと思います。それを北海道大学の事務方は認識しているのか?と考えてみましたが、全く認識していないのでしょうか。

私は、「患者」という人間に関する専門家ではありません。あくまでヒト以外の生物の専門家です。私の同僚たちも、いろんな得意分野に分かれながら、人間を診察できる免許を保持していない医師です。獣医師ですから。

あらゆる獣医師は「公衆衛生学」というものは、生物が生きる環境を維持するために大きな意味を持つと考えます。それは、人間を診察する医師と同様です。長きに渡り「公衆衛生」を追求してきたからこそ、中世のように酷い伝染病などが頻繁に蔓延しなくなったのです。それでも、どんどん新しいウイルスは現れますしヒトに感染することがあります。その場合にどんな対処ができるのか、すべきなのか、生物はどう生きていけるのか、それを考えるため私たち公衆衛生学に携わる物たちはウイルスの研究をしています。

その研究機関を組織内にも敷地内にも持ちながら、ウイルスをばら撒くようなイベントをのうのうと受け入れる北海道大学は本当に愚かであり「大学」の看板を下ろすべきだとすら私は個人的に考えます。

とても長くなりましたが、ヒヨコのような獣医師として言いたいことは「大学が、蔓延に加担などしてくれるな。『できないものは、できない』と、オリンピック組織委員会に断言してくれまいか。それを言えないならば、オリンピック開催そのものを中止してほしい」

以上です。

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