リモートワークが都市を変え、Twitterが賑わう未来

「働き方改革」にもいくつか種類がありますが、その中でもスピード感を伴って進んでいるのが「リモートワーク化」ではないでしょうか。

高速通信網が発達し、どこでもインターネットにつながる世の中。遠隔で共同作業ができるオンラインサービスも充実。日本中、いや、世界中のどこにいても仕事ができる環境が整いつつあります。

実際、政府も後押ししています。

政府は同義でテレワークと呼称していますが、ワークライフバランスの実現、地域の活性化など、さまざまな目的のもと「働き方改革実現の切り札」として推進しています。


東京都も願ったり叶ったりでしょう。

半世紀も解消されない満員電車対策として、通勤時間をずらす「時差Biz」を推奨したり、山手線を2階建て車両にする案も浮上する中、そもそも会社に通う人を減らすことができれば抜本的な改善につながります。

他にも地震や大雪などの自然災害で外出が困難になったり、昨今の新型コロナウィルスのような感染症の予防対策として自宅待機が求められたり。そんなときでも「会社に通勤しなくとも働ける状態」が望ましいとして、大手中小問わず企業がリモートワークを導入していく流れがあります。

大混雑が予想される東京オリンピックも間もなく開催されますしね。

なにより「働き方の自由度が上がる」のは、働き手にとって悪い話ではありません。

たとえば小さい子供が熱を出したときでも自宅で仕事ができたり、通勤に取られていた時間や体力を他の仕事にあてることもできます。

「選択肢が増えること」は、人として尊重されている感じもあって、とてもいいことです。



ただ、企業がリモートワークを勧める背景には「オフィスの賃料を削減したい」という本音もあると思います。

企業が利益を出すには「売上を上げる」か「コストを下げる」かの二択になりますが、どちらかといえばコストを下げる方が利益は出やすいです。

中でも一番コストがかかるのが人件費。かつては不景気や経営悪化を理由に人員削減が進められましたが、最近は黒字企業でも堂々とリストラする風潮がありますよね。

そして「不要」な人員を整理したあと、次に何のコストが削れるだろうかと企業は考えます。

たとえば2008年から2009年にかけて巻き起こったリーマンショックのとき、大手企業では一般的だった「社員への文房具支給」がなくなりました。

おかげで「個人が好きな文具を買うブーム」が生まれて、図らずも文具メーカーを始めた僕にはちょうどいいタイミングだったのですが、とにかく削れるものはどんどん削っていくのが営利企業というもの。良いか悪いかはさておいて。

で、人件費の次に削るとしたら、オフィスでしょう。

都心の賃料は途方もない額です。できれば削減、いずれは完全になくしたいのではないでしょうか。

人も文具も減らした企業のことです。今度は「はたらく場所」さえ社員に提供しない方向に進む可能性があります。



とはいえオフィスに縛られないリモートワークは、社員の生産性を上げることが期待されます。

働く場所を選ばず、つらい通勤電車も避けられますしね。もちろん顔をつき合わせないと進められない仕事もありますが、「必ず出社しなければならない呪縛」から解放されて、仕事の質・量ともに向上する期待感は持てます。

それでいてオフィスの高いテナント料を払わなくて済むのであれば、まともな企業はこう言いますよね。

「家で働いてよ」って。

リモートワーカーが一般化すると、人が以前ほど都市に集まらなくなります。そうなると、街の景観はどうなるのでしょう。

東京で言えば、丸の内や新宿、渋谷、六本木。オフィスフロアをたっぷり設けた高層ビルが立ち並ぶ大都会で、オフィスを必要としない企業が増えたら、ビルの中身はスカスカになるのでしょうか。

イオンに客が流れてシャッター通りと化した地方の駅前商店街よろしく、ゴーストビル化するのでしょうか。その空きテナントを有効活用しようと、さまざまな小商いを行う人たちに安価で貸し出して「商店街ビル」と化すのでしょうか。

地方のインフラが疲弊して、バスや電車、あるいは徒歩で病院に通えてしまう都市生活を望む高齢者が都心に回帰。一方で、リモートワークでどこでも働ける若い世代や子育て世代は気の合う仲間同士で寄り合って、家賃の安い郊外や地方に移住するのでしょうか。

となると「高齢者が取り残された地方と若者ばかりが集まる都会」の図式が逆転し、「高齢者ばかりが集まるシルバー・メトロポリスと若者が寄り集まるヤング・ローカル」に二極化するのでしょうか。

そして都心の空洞化したオフィスビルは開業医が一堂に集う医療センターや薬局ばかりが入居し、あるいはビルそのものが介護施設になったりするのでしょうか。

都会に現役世代が集まらなくなり、ランチや飲み会に利用されていた周囲の飲食店は立ち行かなくなるのでしょうか。




東京から若者が消えることはさすがにないと思いますが、高齢化も進むことですし、都会の景色はこれからどんどん変わっていくんだろうなと想像します。

そのころ、もっとも人で賑わっている街は新宿でも渋谷でもなく、Twitterのタイムラインだったりして。

そして朝、混み合うのは山手線でも埼京線でも田園都市線でもなく、Twitterのサーバーだったりして。

目覚めとともにPC広げて仕事の前にTwitterの画面を開くリモートワーカーによるトラフィックが増大し、「ツイートできねーよ」のツイートでますますパンクする未来。

そんなことでいいのかと思いますが、これで電車が空いてベビーカーでも乗りやすくなるなら、それでもいっか。

昨今はバルスでさえサーバーが落ちなくなった屈強なTwitterですが、今後は規模が違います。ダウンした画面でむかし懐かしい「クジラの絵」を再登場させて、押し合いへし合い怒号が飛び交うタイムラインを和ませてほしいなと思います。

では、仕事に戻ります。



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