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コラム

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その日、その時、思いついたことを書き留めておきます。あくまで、思いつきにつき。
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#コラム

【すべらない文字】ガス代

『人志松本のすべらない話』を文字にしてみても、やっぱりすべらないのかを試みる文章実験です。話に出てきた事実は曲げず、不必要に情報を足さず、しかし解釈を加えて、話芸とは異なる文章ならではの面白味を追求してみました。 その夜、僕はいつものように後輩と酒を飲み、いつものように家路に着いた。いつものように郵便受けのダイヤルを回し、チラシなどの不要な郵便物を手に取ると、ある一枚の紙が目に留まった。見慣れない紙。送り主は「東京ガス」だった。 「ガスが止まります」 最近、引っ越しをし

あみだくじの先に何があるのか

高校は男子校に通っていた。 毎日ゲームと、たまに勉強をするだけで、部活はすぐにやめたし、課外活動もなにひとつやらなかった。友達とどこかへ出かけて遊んだことも、ほとんどない。 眠い目をこすって満員電車に揺られて、学校についたらジャンプを読んで居眠りして、授業が終わったらまっすぐ帰るだけ。中学時代の友達が異性と「高校生」を謳歌して、酸いも甘いも経験していただろう3年間、僕の心はなにひとつ成長しなかった。 だから大学へは中卒で入ったようなものだった。 ★ 大学には、期待を

soiでポストカードを売ってみた

ECサービス「STORES」を展開するheyさんが「soi」という新たなECプラットフォームをリリースされました。 なんでも「ソーシャルでモノを売り買いできるサービス」とのことで、iPhoneまたはAndroidでしか利用できません(PCでは見ることもできない)。 ネットショップをわずか2分で開設できるのが売りの「STORES」を展開しておきながら、さらにスマホひとつで出品または購入が完結するこれ以上ないシンプルなサービスで、位置づけとしては「STORES」を補完あるいは

戦利品とは、自分に勝った証

戦利品という言葉があります。 もともとは戦争用語で、敵から奪った美術品や兵器などを指しますが、近年ネットでは「販売イベントで買った品々」を指して使われるケースが目立ちます。 しかし「戦利品」とは少々大げさでないでしょうか。言ってしまえば、ただお買いものをしただけ。いったい誰と向き合い、何と戦って得た品だというのでしょう。 戦利品はSNSで踊る たとえばコミケや東京蚤の市、紙博といった多くの来場者が押し寄せるイベントが開催されると、TwitterやInstagramで「

10人に1人の左利きはネットで100%

左利きの人は世界に10%ほどと言われる。 肌感覚にも合う。学校でもクラスに3人から4人くらいいて、野球では左打ちだったり、サッカーではレフティーと呼ばれたりして羨望のまなざしだ。 そんな左利きの人たちは少数派であるがゆえ、右利きに標準化された世界に苦労させられている。 右手でSUICAをかざすことが前提な駅の改札が典型的な例。もしも右利きの自分が左手でSUICAをかざすと考えると、手元がおぼつかない。左利きの人は、これを毎日感じているわけだ。 以前の日本は、そう、団塊

面接は遅刻したっていい

自分の恥をさらすのもなんですが、僕は大学生のころ、就職活動にたいへん苦労をしました。4回生のときに内定をひとつも得られず、大学を半期休学して就職浪人の道を選び、5回生(?)のときにもう一度トライして、また内定ゼロに終わるという苦杯をなめました。 それが「時代のせい」などとは微塵も思っていません。たしかに就職氷河期と呼ばれた時代のど真ん中で、入社したいと思っていた企業がそもそも採用活動を見送るなんてことも珍しくありませんでした。でも、内定をもらえなかったのは、やっぱり自分の実

「ぜひ」を使うことの是非

ぜひ食べてみてください。 ぜひ試してみてください。 ぜひ使ってみてください。 この「ぜひ」という言葉をSNSで見かけると、僕は敏感に反応してしまう。「ぜひ」の一言を見たり聞いたりするだけで、反射的に脳が拒絶してしまう。 「あ、宣伝だな」と。 ★ 僕たちは、いつから宣伝が嫌いになってしまったんだろう。 たとえばアメ横に行ったとする。 「食べごろの新鮮なカニだよ」「今ならお安くしとくよ」 そんな言葉が飛び交っていて、はじめは嬉しい気持ちになる。横丁の活気に圧倒されて