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月明かり

さっきまで正面に見えた大きな月が山の方へと隠れる。
それを見ながら、何となく、「明日晴れるといいな」と。

長く続いた地元の踊りは、わたしを含む次の世代へとバトンが渡された。
古くより継がれるその踊りも今では辛うじて原型を留めるらしく、もう間もなく選択を強いられることになるだろう。

いつ頃からか、わたしは踊る人になっていた。
何かの行事が開かれる度、皆が集まって踊りを踊る機会が巡る日に、「今日は参加してくださいね」と集落の長より連絡を受けて、予定を合わせてそこへと交じる。
踊りが成す輪の中の一番後ろより真似て学んでを繰り返すうち、気がつけば先導の歌い始めを担う役割まで。一端に歌と踊りのいろはというか村の人々の歴史だとか、そういう経験を少しだけ語るようになった。

ついさっきまで大きく輝いた月を何も映らないガラス窓に浮かべてみる。
今朝に確かめた雨予報は晴れと曇りを示す。
まあ、雨が降ったとて。

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