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棟方志功記念館がなくなってしまう前に
あんなに大好きなことを一心不乱に幸せそうに成す人があるだろうか。作品はもとより、棟方志功の人間性を愛さずにはいられない。
20代前半で手にした棟方志功の写真集がある。これはこののち私の人生のバイブルとなる。この写真集を撮影した飯窪俊彦カメラマンの写真展が、3年前に銀座で開催され、そこで厚かましくもお友達になっていただいた。80歳を超えた飯窪さんも、本当に好奇心いっぱいの素敵な方だった。ノルドベイクの常連にもなってくださり、いつも棟方の話をして楽しんだ。
去年の5月は、生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタを富山に見に行った。青森や東京での展示を見たことはあるが、たくさんの素晴らしい作品を生んだ富山とはどんなところか、ちょっと嫉妬しつつ訪れた。富山県立美術館だけでなく、戦時中に疎開していた富山県福光も訪れ、土地と人と作品を堪能させていただいた。いやはや棟方が惚れ込むのもわかるくらい、自然豊かで穏やかで可愛い土地であった。民藝にも造詣が深く、棟方が長く好んで住み着いたのがよくわかった。私も住みたくなった。
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そんな世界に愛されるムナカタの地元青森市にある棟方志功記念館が3月に閉館してしまう。青森県立美術館に集約されるらしいのだが、こちらも私の青春の1ページなのでとても寂しく思う。このエリアは私が社会人(大人)になって初めて住んだ場所なので思い入れが特に深い。棟方志功記念館前も毎日のように通っていた。
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3月の閉館まで、「板極道」という展示がされている。版画ではなく板画とよび、自らの魂から湧き出たものを板に彫ってゆく。自分の信じた道を、極道のように一心不乱に突き進む棟方の情熱。あなたはどうですか?と作品たちに問われているようで、胸が苦しかった。現代において、こんなに直接的に自分のやりたい表現をすることはなかなか難しいんだよ志功さん。やりたいことや、夢があったとしてもダイレクトに繋がれることは珍しく、間に何かしら介在してしまう。
だけど棟方の作品たちを見ていたら、目標に対し間接的であっても、やりたくないことをやる時期があったとしても「信じるんだよ」って、満面の笑みで志功さんに言ってもらえた気がする。
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