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蛇のみち

なぜか伊波普猷のあの本、「沖縄よ何処へ」に出会った昨年の春からカナダ移民の話も含め、沖縄移民のほぼほぼが移民先の異郷でその本を手にしたのではないか。その本は世界社という出版社から出ていて、伊波普猷が当時のハワイにいる沖縄移民によって航路で迎えられ、その後沖縄移民のいるアメリカやブラジルなんかにもきっと伊波普猷は出向いて話をしたんじゃないかと思っている。その時にこの本「沖縄よ何処へ」は作られ移民の手に届いたというものだった。小さな冊子だがそこには、沖縄のアイデンティティを持つ移民の人々への希望、叱咤激励が込められている、そんな冊子だと私は感想をもった。移民先で伊波普猷の言葉は力強かったかもしれないが、異郷での暮らしはとても厳しいものがあったと想像できる。そして太平洋戦争があって、いろんな事情で帰国せざるを得なかった移民がその本を手放し、それが古書店にあるのではないかという考察までするようになった。そして、その本を作った“饒平名智太郎”という名前を島の彼女からきいてその本を図書館で流し読みした。確かに彼だ。なんと読むのだろう。しかも生まれた場所は那覇市の若狭だが住所は武蔵野吉祥寺のようだ。ヌエ的、なるほど、不思議な人だ。世界社という出版社だ。この人の移民文学というジャンルを読んでみたいものだ。

とりあえずあっちこっちから、私の琴線に触れるものが目の前に現れるものだから、忙しいったらありゃしない。

お世話になった友人の結婚祝いにと2007年に初めて訪れてから度々覗く沖縄民藝を売る店で陶芸家・大嶺實清さんの息子さんの作品を購入、お祝いに送る。大嶺ブルーとい呼ばれた青の器の中にカナダでいつも観察してた苔など入れたら素晴らしいだろうとか、月桃の紅い実を入れて飾ったら映えるだろうとか、色々考えたが、案外恭しくポテトサラダやきんとんなんか入れても良さそうだった。季節のゼリー寄せとか。

その店の隣にある雑貨屋みたいな品の良い店があって、一度も入ったことないのに、なぜかスススとのら猫が入ってくみたいに入っていった。
そこで麻のエプロンを買って、なんだかんだ見ていたら、お店のマダム
(と言ってもお若い女性)が、何か手伝ってくれた際に「手が汚くて
すみません」と謝るものだから、どこが汚いのか私の目にはさっぱりわからず聞けば「藍染」をやっているとかで、ついこないだまで隣の店では宮古上布のワンピースなどを売ってたらしく、全て完売で残念!などと嘆いたついでに、この島の伝統、民藝、そして伝承しなければならない文化財などの話になり、当然カナダの先住民の話や、ナナムイの話にもなぜか熱くなり、そして彼女の正体はこの店の元々のオーナーの娘さんだったということが判明し、隣は兄弟がやっているんだそうだ。
 昔、隣で琉球花札を買ったという話をしたら、あの作品はもう2度と作れないことや絵柄の秀逸さなどなんだかんだ話しているうちに、ネフスキーや宮古の言葉の話にもなったりやや興奮気味に話がポンポン弾んでゆくと彼女が「私の祖父がネフスキーさんや柳田先生関連のことがとても詳しくて、たくさんその書籍を持っていたり資料があるんですがどこでそれをどう保存するのか、そして狩俣出身なのですが、狩俣にも祭祀があって、もうそれもどうやって存続してゆくのか、保存するのかいろんな問題がこの島にはあって」云々とおっしゃる。ちょっとびっくりして、話をうんうんと聞いてみると、彼女の祖父という方は佐渡山正吉さんという方だという。
早速、図書館に行って調べると、あああああああ。この本に出会ったのであった。

青い海は好きな冊子だこういう冊子がまた発行されてほしい沖縄よ


さらに図書館のさまざまな本をひらけば、月と女の話、いろんな本に遭遇。久々に沖縄文学なんぞをめくってみれば、10代の頃に読んだ「オキナワの少年」の“ミチコー”という名前の懐かしさに、グッときたあの10代の夏を思い出し、沖縄はまだ未知の島だったあの頃と今を考えると、本当に蛇のようにくねくねと曲がりくねった長く辛い人生でも、こうして色々自分の琴線に触れるものにいつも遭遇しては、喜びを感じるのだから、まんざらでもないし、むしろ、もう先も短いとわかれば、人生の一瞬一瞬をもっと豊かに愉しみたいものだと、本や自然、大好きなものたちに囲まれて、過ごしたいわけで、そうこうしてネフスキーの本にも蛇はあるし、ネフスキーが上陸したのが渡久地の浜だと知ったので、星たちを眺めたあの暗闇はその浜だったんだなあと翌日また夕暮れの潮風に吹かれてみた。なんでも、ネフスキーは100年前の8月に来たんだそう。
宮古島にはまだ何か私を惹きつけるものがある。

 今朝浜辺で見たあの腹のぽてっとした海蛇は私に何かを託した存在ではないかと、感じてならないのであった。



夕暮れの渡久地の浜
海蛇
図書館大きい


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