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宝塚雪組「双曲線上のカルテ」観劇録 part2

注意:
今回も多くのネタバレを含みます。また、批判的な感想もあります。まだ見ていない人で、ストーリーを楽しみにされている方は(はばかりながら)回れ右して、お引き取りいただいた方がいいかもしれません。
逆に観劇後にモヤモヤされている方は一緒にお焚き上げしましょう。

Part1は主にフェルナンド先生のキャラクター設定のひどさについて書きましたが、今回は作品全体に漂う女性蔑視が許せない、という話です。

Part1をまだ読んでいない方は、よければそちらからどうぞ。

それでは、気がついたものを雑多に書きなぐっていきますよー。
ソレー!!

【1】看護師の表現に敬意が感じられない


・キャピキャピの若いナース集団
・看護師はあたかもみんな医師を狙ってるかのような演出
・たとえば採血、血圧測定、点滴の交換、カルテの記入などプロの医療職としての表現よりも恋する表現が目立つ。たとえば「あなた、いい人を捕まえたじゃない」
☆ベテランの師長は【怖いお局】みたいな描き方
・看護師の制服がワンピースとナースキャップ。ましてや舞台はイタリアですよね?
・同じ看護師が病棟とオペ室の両方で働いているのは非現実的(過重労働させすぎ)

私がリマインドする必要ないと思いますけど、看護師はプロの医療職ですからね。
専門的な勉強をして国家試験を受けて合格し、
日々命を扱う緊張感のある仕事よ。
コロナのとき(今も)猛烈にお世話になってるエッセンシャルワーカーだしね!

放射線技師ジョルダーノ(久城あすさん)はプロの医療職として描写されてたよ。
余計なことはしないし、言わない。恋愛するために職場にきてるわけじゃない。医師に頼まれたことを淡々とこなす。放射線量について専門家として忠告する。
放射線技師の仕事をプロの医療職として描写できるんなら、
看護師も同じようにリスペクトして描写できるでしょう?!

脱線しますが、久城あすさん、カッコよす。
うまく伝えられないのだが、X線写真の入った茶封筒を持って立っているときの姿勢?なのかな、放射線技師としてのプロの医療職っぽさが出てて、目を奪われました。さりげないところにも神経をいきわたらせてて、役者よねー。爆イケ。

【2】女性の表象が男性のファンタジーの詰め合わせ(ひどいので、全部にツッコミを入れていきます)

・養育費の要求はワガママ。

違う!養育費は子どもの衣食住に必要な経費,教育費,医療費のこと。子どもを育てるのにお金がかかるの(常識)。養育費を請求するのは当然。むしろ、自分の子どもの養育費を払わない男が無責任なの。お金がないなら減額は仕方がないかもしれないけど、お金があるのに養育費を払わないことこそ男のワガママ。

・養育費を要求することは、恋愛当時を否定することになる

んなワケないでしょう?。マルチーノ院長(夏美ようさん)とアントニーオ(咲城けいさん)は親子の関係だから、親が子どもを育てるために必要なお金を払うのは当然のこと。
アントニーオはもう成人しているみたいだけど、大学いくのに奨学金借りてるだろうから奨学金の返済くらいはするべきよね。マルチーノ院長の振り出した小切手を見て「僕は日本の大学を出たから奨学金に利子がつくんだよ。これじゃ利子も払えないよ」くらい言ってほしい。

アニータ(希良々うみさん)とマルチーノ院長(夏美ようさん)の過去の恋愛関係を精算するとしたら慰謝料だね。「養育費」と「慰謝料」をごっちゃにしてはいけない。混ぜるな、危険!

なお、わたしはたとえアニータが慰謝料をもらっても、恋愛当時の気持ちを否定しないと思う。慰謝料は、振られて傷ついたことを慰めるためのお金だから。
残念ながら現実社会では、精神的苦痛が大きければ大きいほど高い金額になるわけじゃないけど、これはフィクションだからアニータはマルチーノ院長に巨額を請求したらいいと思う。こんな無責任にセックスして避妊もまともにできないマルチーノ院長はスッテンテンにしてしまえ!w

・女性に手を出しまくったスケベなマルチーノ院長(夏美ようさん)の悪行が、ストーリー上ちゃんと懲らしめられないこと。妻のロザンナ・マルチーノ(五峰亜季さん)がビンタしてお笑いシーン扱いされるところ。困った人ねぇ程度の扱い?

わたしの意見ですけど、マルチーノ院長は最低限パイプカットは必要でしょうよ。
手術のときに手元が狂って阿部定(あべさだ)事件に発展するのも個人的には大歓迎w
執刀医は、まじめでカッコいいランベルト先生(代役 眞ノ宮るいさん)に是非お願いしたい。

ちなみに、五峰亜季さんがブチ切れるときにつくる間(マ)とドスの聞いた声が最高だったので、五峰さんのお芝居を絶賛したい。さすが専科。
自分が叱られたわけじゃないのに、足元から迫ってくるような迫力があった。
第一幕でランベルト先生(代役 眞ノ宮るいさん)にしなだれかかるときの声色とのギャップがすごい。どんな声帯してるんだろう(褒めてます)

・モニカがフェルナンド先生が死んだ後もずっとフェルナンド先生を想って生きる、みたいなラスト。

男性作家ってほんとにこの展開が好きだよねー。男が死んだあと、女が生涯独身を貫くストーリー。戦争映画もこんなん多い。ワンパ(ワンパターンの略)すぎる。
自分が死んだ後、好きな女が恋愛、結婚、趣味、仕事などに没頭して幸せに暮らすことを願えないものなの?
この展開にロマンを感じる男性は基本的に独占欲が強くて、嫉妬深いんだと思う。わたしだったらそんな男は地雷認定しちゃう。

看護師の表現で☆をつけたけど、看護師長のように女性管理職は【怖いお局さん】として表現するの何周遅れですか?って感じ。
男性作家・演出家から見たら、女性同士の上下関係ってこういう解像度でしか見えていないんだと思う。実際は女性管理職もめっちゃ多彩だし、いろんな人がいる。
フィクションでは、専業主婦を表現するとき毎回毎回【買い物袋からネギ】だけど、女性管理職=【怖いお局さん】もそれと同じくらい陳腐でワンパな表現。創作力が貧相。

(わたしも含めて)みんな普通に生きてたら男尊女卑を内面化してしまうのは仕方がないけど、女性作家ですばらしい表現をする人たくさんいるから、こういうのを見るとギャップがすごい。これが大多数の男性作家の限界なのかなーと思っちゃうよね。

あと、細かくて申し訳ないけど、
パンフレットのメインキャストが載ってるページで「婦長」とか「看護婦」という表現は、ジェンダー平等の観点からアウトよ。
校正チームのジェンダー意識の低さが露呈しておる。SDGsのゴール5番はジェンダー平等だからね。しっかりして!

(誤)婦長
(正)看護師長

(誤)看護婦
(正)看護師

(誤)看護士
(正)介護士
(代役 絢月晴斗さんは介護士って言ってたゾ。看護師にしても師の漢字が違うゾ)

なお、木場理事長のあいさつ文では、看護師という表現だったから表記も統一できてないし。

たぶん渡辺淳一の原作はジェンダーNG表現で、そのまま使ってしまったのかな?と推測するけど、これだから【昭和の男性作家の】作品の再演はかなりリスクですよ。

ということで、噴水のようにツッコミが出てきますけど
それでも作品を楽しめるのが宝塚の不思議なところ。

見に行かなきゃよかった、とは絶対に思わないのよね。金額以上の価値がある。

これだけのマイナスをカバーしてプラスに持っていけるジェンヌ様方の美しさと高度なパフォーマンスよ。

ひとつ。
誰とは言いませんが、電話の音が鳴る前に振り向いちゃってたの、見ちゃったよ!
オペラグラスで見てたらジェンヌ様が急な動きをして、びっくりしてたら、電話が鳴ったの。

こういうのも舞台ならではだから、楽しい。

もしかしたら音速の関係で、ステージでは音が聞こえてて、14列目のわたしのところにはまだ音が聞こえなかっただけかもしれない。音速は340m/秒だもんね。

頼まれてもいないのに素人のクソバイスをさせていただくと、ジェンヌ様、電話が鳴って振り返るときはコンマ何秒か遅らせた方がリアルですよ🤭

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