のらいぬ放浪記1.入間市博物館ALIT

先日(といっても8月上旬くらいですが)、入間市方面に出かけたついでに、未訪問だった入間市博物館ALIT(アリット)を訪れました。


入間市博物館ALITとは


入間市博物館は、入間市が設立・指定管理者が運営する博物館です。
指定管理者制度を導入している、ということですね。
近隣ですと、狭山市立博物館も同様の運営方法です。

入間市は狭山茶の主要産地であることから、「お茶の博物館」をコンセプトの1つにしているようです。

駅からは(八高線からも西武池袋線からも)だいぶ遠いですが、私は車で行ったのであまり気にならず…

展示の見どころ

以下、展示を見学して印象深かったところを紹介していきます。
※展示室内の写真について、HP等への掲載は入間市の方で「私的利用の範囲外」という見解になっており申請書が必要なため、写真は撮載せていません(撮ったときはそこまで考えてなかった)

武蔵七党の人々

自分が中世を専門にしていることもあって、中世の展示はやはり気になります。

入間市内を拠点としていた武士としては、丹党・加治氏と村山党の金子氏・宮寺氏が知られていますが、それぞれの系譜や拠点とされる館跡について、結構細かくパネルで紹介されています。

党的武士団(いわゆる武蔵七党の人々)の展示でここまで丁寧に、というのはすごい。
加治氏の円照寺をはじめ、拠点の様子が発掘でかなり明らかになっていたりと、展示の素材が豊富にあるというのも大きいのかもしれません。

円照寺、まだ見に行ってないので行かなければ…

馬車鉄道の時代

展示を見学していて感じたのは、近現代の展示が非常に充実していること!

特に印象に残っているのは馬車鉄道に関する展示です。
交通・運輸の主役が街道・河川から鉄道に交代する直前、短い期間ではありますが馬車鉄道が大変活躍した時代がありました。
その地域に鉄道が導入されると事業をやめてしまったり、電化されたりしてしまって、たいてい存続期間が短い。
存続期間が短いと当然資料も残りにくいのですが、入間市博物館では馬車鉄道の切符や時刻表が展示されていて驚きました。

やはり人口が多いとそれなりに資料が残りやすいのでしょうか。いやぁ、すごいなぁ。


幻の狭山飛行場

Googlemapで館の立地を見ると、何やら変な四角い区画の南側にありますが、実はこの区画は戦前〜戦中に存在した「陸軍航空士官学校狭山飛行場」の痕跡で、展示にも出ています。

同様の飛行場は、高萩(日高市)や坂戸にもありますが、狭山飛行場は比較的よく資料が残っている印象を受けました(展示に対する意欲が高いだけかもしれませんが)。
これらの飛行場跡は、いずれも戦後は農地として開発→工業団地・商業団地へ、という軌跡をたどっていて、航空写真などで見るとどこも区画がよく残っています。
なお、現・所沢航空記念公園として有名な所沢陸軍飛行場は、はじめは陸海軍共同の軍用気球研究所として出発したらしく、これらとは少し毛色が違うようです。

「お茶の博物館」に偽りなし

「お茶の博物館ねぇ…製茶関連の民具が網羅されてるとか?」と思ってましたが、それどころではなかったです(もちろん製茶の民具もしこたまあります)。

吹き抜けフロアに、世界の喫茶風景(中国・チベット・イギリス)の実物大展示がある!
展示を作ったときから結構時間が経っているっぽいので、標本類は樹脂がちょっと黄ばんだりもしていますが、当時は相当お金がかかったでしょう。

博物館の中の人をやっている身としては、こういった館のコンセプトが明確にある=収集の方向性が定まっている、というのはとても良いことだと思います。
博物館といえど、無限にモノを収蔵できる訳ではないので、やはり取捨選択をせざるを得ない。
その時に明確な方針があれば、資料を受け入れられるか?という瀬戸際のときに「自館のコンセプト上必要なんです!」と上司を説得できたりもするでしょう。

小泉武夫さんの『中国怪食紀行』で紹介されていた、東南アジアの茶葉の漬物(の食品サンプル)もありました!

全くの余談ですが、小泉武夫さん、専門分野と経歴的に『もやしもん』の樹教授のモデルだと思ってたんですが、どうなんでしょうね。
はじめて本を読んだときは「本当に漫画みたいな研究者がいるもんだなぁ」という感想を抱きましたが。

とにかく展示に気合が(お金も)入っており、「お茶の博物館」の名乗りに偽りなしです。

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